不足する除菌スプレー市場に異業種参入した養蜂業者の「こだわり」と「思い」

2020年04月19日 09:22

アルコールハンドスプレー

厚生労働省のコロナ対策HPでも有効とされているアルコール濃度70%を満たしている

 新型コロナウイルスの影響で、未だに市場ではマスクが不足している状況だ。

 いち早く名乗りを上げたシャープをはじめ、トヨタ自動車、その子会社のデンソー、日清紡ホールディングスなど、連日のように異業種からマスク生産に名乗りを上げる大手企業が続々と現われている。政府の試算によると、4月のマスク供給量はおよそ7億枚を超える見込みだが、それでも最前線で働く医療従事者を優先することを考えれば、一般市場ではまだまだ品薄の状況が続きそうだ。

 不足しているのはマスクだけではない。スーパーやドラッグストアなどでは、アルコール除菌グッズも軒並み品切れの状態が続いている。マスクに加えて除菌グッズが不足していることで、不安に拍車がかかっている。

 そんな中、アルコールスプレーの製造にも、異業種からの参入の声が上がった。名乗りを上げたのは意外にも、ミツバチ由来の健康食品や化粧品などを販売している山田養蜂場だ。

 同社の販売する高品質なハチミツやローヤルゼリーなどが、この新型コロナウイルス禍の中で免疫力を上げる食材として注目を高めている影響もあってか、同社にはウイルス対策についての相談や問い合わせが多く寄せられている。そこで同社では、顧客の不安の声に応えるため、急きょ、これまで取り扱っていなかったアルコールハンドスプレーを販売することを決めたという。

 「いま求められているものを提供する」「エビデンスに基づいた正しい情報だけを伝える」という考えのもと、今回のアルコールハンドスプレーは簡易な袋に入れて発送されることになった。箱に梱包する手間と時間を省き、少しでも早く、顧客の手元に届けるためだ。また、宅配を受け取ることで感染するかもしれないという懸念を拭うため、ポストインで対応できるようにも取り組んでいるという。

 ハチミツや健康食品の品質管理を世界基準よりはるかに厳しく設定している同社の品質へのこだわりは、異業種とはいえ、このハンドスプレーでも同じだ。厚生労働省のコロナ対策HPでも有効とされているアルコール濃度70%を満たしているのはもちろんのこと、原価の安い工業用エタノールではなく、安全な食用エタノールを使用しているので、子どもから大人まで安心して使える。しかも、保湿剤にはなんと、通常販売している食用のハチミツを使用しているという。飛行機携帯もOKという優れものなので、どうしても避けられない帰省や出張などの際にも重宝しそうだ。

 今、あらゆる企業が、持てる技術や培ってきたノウハウを駆使して、新型コロナウイルスの脅威に立ち向かおうとしている。しかも、日本の企業はこの非常時でさえ、品質へのこだわりを忘れない。それは何と心強いことだろう。海外からの輸入品も制限され、あらゆる商品が不足しがちになっているが、焦らず騒がず、一丸となって、一日も早くこの混乱を終結させたいものだ。(編集担当:藤原伊織)