NYダウは108ドル安の大幅下落。住宅統計に陰りが出て、FOMC議事録でQE3の出口論議をしたのが表沙汰になっては史上最高値の壁は厚い。21日朝方の為替レートはドル円は瞬間94円台にタッチして93円台後半だったが、ユーロ円は124円台前半とユーロ安進行。ドイツのメルケル首相が「1ユーロ1.30~1.40ドルは歴史的にノーマル」「ユーロ圏債務危機の克服はまだ遠い先」と発言を連発したのが効いた。今週末投票のイタリア総選挙にも注文をつけたという。下落したら「あのおばさんのせい」にされそうな日経平均は63.55円安の11404.73円で始まった。
ところが、アジアではメルケル発言よりもFOMCがQE3の出口を論議していた話のほうがより深刻に受け止められ、上海も香港もソウルも台北もムンバイも全て株価下落。それに引きずられ東京市場も前場の後半、さらに後場と一段安になり、一時は11300円台を割り込む寸前までいく。終値は159.15円安の10309.13円。為替レートもドル円93円台前半、ユーロ円123円台後半まで円高が進んでいた。今週、売買高は3日連続30億株割れ、売買代金は4日連続2兆円割れで、2月前半とは明らかに流れが変わっている。
東証33業種で上昇したのは空運業、その他製品の2業種だけ。下落率が小さかったのは繊維製品、ゴム製品、医薬品など。下落率が大きかったのは保険業、非鉄金属、鉄鋼、鉱業、パルプ・紙などだった。
「日経平均寄与度御三家」が揃ってマイナス寄与度1~3位に並んで44円引き下げるなど、この日は主力大型株の下落が目立ち、その理由の三大キーワードは「アップル」「中国」「キャタピラー」。アップルとは台湾の鴻海が主力工場の増産計画を凍結した話で、「iPhoneはやっぱり売れてない」とシャープ<6753>10円安、村田製作所<6981>90円安、TDK<6762>30円安、フォスター電機<6794>11円安、太陽誘電<6976>32円安と、アップル関連銘柄は揃って株価を下げた。
中国とは中国政府が不動産税の適用対象都市を拡大して不動産価格を抑えにかかる話で、春節明けの上海市場を冷やし中国関連銘柄の売り材料になった。キャタピラーとは中国での低迷も響きアメリカのキャタピラー社の11~1月の販売が4%減と不振だった話で、機械関連の株価を下げた。キーワードが重なるファナック<6954>が320円安、コマツ<6301>が99円安で日経平均の重しになり、中国関連銘柄の日立建機<6305>、ダイキン<6367>も売られた。三菱商事<8058>44円安、三井物産<8031>24円安など商社株が悪く、JFEHD<5411>が90円安で値下がり率14位、新日鐵住金<5401>が7円安になるなど鉄鋼株も良くなかった。
みずほ<8411>1円安、三菱UFJ<8306>13円安、三井住友FG<8316>105円安とメガバンクは不調で、トヨタ<7203>も55円安とさえなかった。その他に住友金属鉱山<5713>が値下がり率5位、ニチイ学館<9792>が値下がり率9位に入るほどの大幅安。「プレステ4」を発表して、子会社のエムスリー<2413>の株式売却を決めたソニー<6758>は24円安で、エムスリーは値下がり率6位の大幅安になっている。一方、プレステのライバル機「Wii U」を出している任天堂<7974>が買われて120円高になったのは、「売れていない『Wii U』でも『プレステ4』よりマシだ」というソニーへの当てつけだろうか。
こんな日でも元気だったのが内需関連株で、45円高の大日本住友製薬<4506>、40円高の塩野義製薬<4507>、7円高の第一三共<4568>など医薬品は比較的好調。昨年来高値を更新した値上がり銘柄には良品計画<7453>、100円ショップのキャンドゥ<2698>、ドラッグストアのマツモトキヨシHD<3088>、コスモス薬品<3349>、クスリのアオキ<3398>、ホームセンターのコメリ<8218>、島忠<8184>、レジャー関連のラウンドワン<4680>、オリエンタルランド<4661>、エイチ・アイ・エス<9603>などがあった。
今日の主役は「ボーイング787関連銘柄」。前日に日本の運輸安全委員会が「トラブルの原因は電気配線の設計ミス」と明らかにし、ボーイング社は22日にも787のバッテリーの問題を改善した設計変更案をFAA(アメリカ連邦航空局)に提出し、数週間以内の運航再開を見込んでいると報じられた。全日空<9202>は値動きなし、JAL<9201>は55円高で、空運株は業種別騰落率でトップになった。バッテリーを製造したGSユアサ<6674>は26円高で値上がり率9位。翼を作っている富士重工<7270>も買われて17円高だった。三菱重工<7011>は値動きなし、炭素繊維の東レ<3402>は1円高、チタンの東邦チタニウム<5727>は前場はプラスながら2円安、飛行制御装置のナブテスコ<6268>は23円安だった。FAAを管轄するアメリカ運輸省のラフード長官は「機体の安全性が1000%確保されるまで運航再開は認めない」と目をつり上げるが、787はいつ、大空に復帰できるのか。(編集担当:寺尾淳)