弾劾裁判所裁判長(自民)も総理任命拒否に苦言

2020年10月07日 06:06

 菅義偉総理の日本学術会議会員への6学者に対する任命拒否に、裁判官弾劾裁判所裁判長を務める与党ベテラン議員からも苦言が出された。

 苦言を呈したのは日本学術会議の会員を「公選制」から「推薦制」に変更した際に、衆議院文教委員として審議に携わっていた自民党の船田元(はじめ)衆院議員(12期目)で、菅義偉総理が6人の会員任命を拒否した問題の背景について「安倍内閣として進めようとしていた組織犯罪処罰法や平和安全法制(安保法制)、特定秘密保護法など、国の重要政策に(6人の学者が)反対の意思表示を行ったことだ。任命拒否の背景が透けて見える」と日本学術会議の独立性が担保できるのか、懸念をうかがわせた。

 船田氏は「1983年に日本学術会議の会員の『公選制』から『任命制』に変更した際、私も衆議院文教委員として審議に携わり、委員会での強行採決にも出くわした。変更の理由は『選挙に出る科学者が減少した』とか『選挙において不適切な行為が見られた』と記憶している。当時答弁に立った丹羽兵助・総理府総務長官や高岡完治・内閣官房参事官も『学会の方から推薦していただいた者は拒否しない』『推薦者は拒否しない形だけの推薦制』『形式的な任命制』と口を揃えていたことを覚えている」と野党が主張する根拠の正当性を裏付ける書き込みをしている。

 そのうえで「この時の答弁が、直近まで有権解釈として政府が受け継いできたはずだ」と菅総理の対応に強い疑問を投げた。

 また、船田氏は「 加藤勝信官房長官の発言などから、最近、任命制のあり方について内閣法制局と内閣府が詰めの議論を行い『学会の推薦を拒否しない』との解釈から『学会の推薦の中から任命する』『法律上は推薦された人の中から選ぶことができる』という解釈の『確定』をしたという。しかし過去の経緯からして、これは明らかに『解釈の変更』で、事前に国会や与党に周知すべき。我々には何も知らせず、闇討ちだ」と不快感もうかがわせている。

 また、今回の対応の狙いが「(政府の方針に)『反対すると、こういうことになる』と、抑止効果を狙ったものとしか思えない」と日本学術会議の独立性を脅かす悪影響を危惧した。

 船田氏は「日本学術会議は『学者の国会』であり、政府(内閣府)の一機関ではあるが、『政府からは独立した合議体』である。政府の諮問に応じて答申を出すほか、会議の総意により政府に意見具申することができる。アカデミアの意見を具体的に率直に表現するためには『独立』していることが極めて重要。組織としての独立を保たれるか否かが問題だとし「政府に反対する学者を意図的に排除するのではなく、学術会議内部での議論の淘汰と世論の形成過程に信頼を置くという精神的な余裕を現政府は持つべきなのではないか」と苦言を呈した。(編集担当:森高龍二)