新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の経済が大混乱に陥った2020年もあとわずか。ところが、寒さが深まるにつれて日本各地で感染者が増加しており、再び不安が広がっている。こんな時だからこそ、日本の企業には利益よりも「人」を大切にする大和魂の精神で一致団結し、この難局を乗り越えてほしいものだ。
そんな中、一般財団法人日本次世代企業普及機構が主催する「第5回ホワイト企業アワード」の表彰式が催された。企業の大小にかかわらず、全国の「素晴らしい会社」を称賛・表彰するもので、認定企業から「将来性」「独自性」「再現性」「社会性」のある取り組みを募り、全国24社の受賞企業を決定した。とくに今回注目されたのは新設された「コロナ対策部門」だ。コロナ禍に伴って各社が実施した新たな制度や取り組みの中から、木造注文住宅メーカーの株式会社アキュラホーム、人事コンサルティング企業の株式会社あしたのチーム、インターネットメディア事業の株式会社キュービックの3社が選ばれ、受賞した。
アキュラホームは住宅メーカーの中でも早い時期からコロナ対策に取り組んでいる企業だ。住宅メーカー初の試みとしてロボットが案内する無人住宅展示場を導入するなど、同社が実施してきた多くの施策の中でも、今回の「コロナ対策部門」ではとくに、オンラインとオフラインを融合させた企画力溢れる「入社式」が大きく評価された。同社は従業員、その家族、お客様の健康と安全を守るという想いから、例年は本社で行っていた入社式のやり方を変え、本社と全国17拠点を中継で結ぶ「分散型」で開催したのだ。辞令も、同社のモデルルームを案内しているロボット「Go!カンナ君」が非接触で計115人の新入社員に交付するという徹底ぶりだ。しかし、同社の発想はそれだけに留まらない。なんと、この入社式を動画サイトを通じて新入社員の家族にもオンライン配信したのだ。いつもならば、家族が息子や娘の入社式を見ることはできない。しかし、このコロナ禍においては家族も大きな不安を抱いている。そんな中、社会に一歩を踏み出す我が子の晴れ姿をオンラインでも見られたことは、両親や祖父母に安心と大きな喜びを与えたに違いない。
一方、株式会社あしたのチームは、長期休暇を利用したサテライトオフィスでの独自のワーケーション方法が高い評価を受けた。近年、「仕事(ワーク・work)」と「休暇(バケーション・vacation)」を組み合わせたワーケーション勤務を導入する企業は増えているが、同社の施策のユニークな点は、自治体をも巻き込んだことだ。徳島県三好市と提携し、同社のサテライトオフィスでワーケーション勤務を推奨。使用時には会社が旅行代金として20万円を補助するというのだ。太っ腹な金額もさることながら、コロナ禍で疲弊している地域産業への貢献も含んでいる点が新しく、社会性の観点からも大きく評価された。
また、株式会社キュービックでは、「新型コロナ緊急学生支援プロジェクト」として、約130名の全インターン生を在宅勤務体制にし、それに伴って様々な支援施策を導入したことが評価されての受賞となった。同社では、オンライン環境下でも研修や1on1、様々なコミュニケーション施策によってスキルアップできる仕組みを確立させたり、学校のオンライン授業受講環境にオフィスを開放するなど、会社とインターン生双方の成長貢献に繋げる施策を実施。その結果、自宅・学校・オフィスの3拠点の移動時間を削減し、インターン時間に隔てられることで経済的な支援につながり、企業側も裁量の大きな仕事を任せる事が可能になり、インターン生の成長と責任感の向上が会社の業績にも繋がったという。
3社の受賞内容を見てみると、それぞれコロナ対策として新たに大きな設備投資をしているのではなく、いずれも経営者の従業員に対する想いと熱意、発想、工夫で成り立っているのが興味深い。また、3社の施策に共通しているのが、単なる感染防止策ではないことだ。世界を混乱の渦に陥れている未曽有のパンデミックすらも逆手にとって、これまでになかったメリットを見出そうとする姿勢こそが「ホワイト企業」たる所以なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)