ＮＹダウは４６ドル安。ＱＥ３打ち切り警戒感が高まったところへ、フィラデルフィア連銀製造業景況指数がマイナスで新規失業保険申請件数も増加と、予想外に悪い経済指標が出て下落。前日からＮＹ金価格、ロンドン銅価格、ＷＴＩ原油価格など商品市況が軟調で、日米で債券が買われて長期金利が下落し、ＶＩＸ指数（恐怖指数）が１４．６８から１５．２２に上昇するなどリスクオフの弱気の虫が収まらず、株安は地球を一周した。２２日朝方の為替レートはドル円は９３円近辺、ユーロ円は１２２円台後半と、前日よりさらに円高が進行。ユーロ圏製造業ＰＭＩが１．３ポイントも低下してユーロ安に拍車をかけた。「売買も細ってさすがの日本株も約３ヵ月ぶりに本格調整局面入りか？」というムードに日米首脳会談やイタリア総選挙の結果待ちもからみ、日経平均は７０．３８円安の１１２３８．７５円で始まった。
前場は一時１１２００円を割り込む弱含みだったが、昼休みに絶妙のタイミングで首相訪米中の留守番役の麻生財務大臣の発言が飛び出した。日銀の次期総裁は「連絡がきちんと取れる人であれば財務省出身者ではなくてもいい」という内容で、麻生氏は財務省出身の武藤敏郎氏支持と考えられたため、経済企画庁出身の岩田一政氏の目が浮上するサプライズで市場が「円安・株高」で反応。後場に入って日経平均は先物主導でプラスに転じたが、ＴＯＰＩＸはなおマイナスで１９日とは逆パターンの「ＮＴねじれ現象」が長時間続いた。日経平均終値は７６．８１円高の１１３８５．９４円。値上がり銘柄５７３より値下がり銘柄９８２のほうが多く、ＴＯＰＩＸ終値は＋０．６２の９６３．４８とかろうじてプラスだった。結局、株安の地球周回は東京で麻生氏の“口”が止めた。売買高は３３億株だったが売買代金は２兆円の大台を回復し、今週の取引を終えている。
この日の上昇セクターはパルプ・紙、サービス、食品、水産・農林、陸運など。下落セクターは悪い方から保険、ガラス・土石、卸売、銀行、電気・ガスなどが並んでいた。
円高は内需系ディフェンシブ銘柄の出番。食品株のキリンＨＤ＜2503＞は５０円高、アサヒＧＨＤ＜2502＞は３５円高、鉄道株のＪＲ東海＜9022＞は２８０円高、小売株の三越伊勢丹ＨＤ＜3099＞は２３円高、Ｈ２Ｏリテイリング＜8242＞は１８円高、ユニーＧＨＤ＜8270＞は３１円高と買われていた。良品計画＜7453＞は４００円高で値上がり率１５位に入り好調。武田＜4502＞も３０円高と堅調で、キヤノン＜7751＞は１０円高。富士通＜6702＞、マツダ＜7261＞は大引け間際にプラスに転じた。
値がさ株のファーストリテイリング＜9983＞、ファナック＜6954＞、京セラ＜6971＞、コマツ＜6301＞は、日経平均と歩調を合わせて後場はプラスに転じた。セコム＜9735＞、ダイキン＜6367＞、ＫＤＤＩ＜9433＞も日経平均の上昇に寄与。富士重工＜7270＞は後場に大きく上昇して５０円高で終えた。
メガバンクのみずほ＜8411＞は１円高だが三井住友ＦＧ＜8316＞は２５円安、三菱ＵＦＪ＜8306＞は７円安。トヨタ＜7203＞は３５円安でホンダ＜7267＞は５円安。ソニー＜6758＞３５円安、三菱商事＜8058＞３０円安、三井物産＜8031＞１８円安、アステラス製薬＜4503＞４５円安、ＮＴＴ＜9432＞７０円安と、この日は大型主力株の下落が目立った。「中期経営経営計画の公表の先送り検討」と報じられたシャープ＜6753＞は１１円安で値下がり率２０位。同じアップル関連のＴＤＫ＜6762＞は３０円安で続落。東京エレクトロン＜8035＞も売られた。ＤｅＮＡ＜2432＞は１４３円上昇し値上がり率２０位に入った。
京都大学とのｉＰＳ細胞の共同研究で前週から昨年来高値を更新し続けている新日本科学＜2395＞はこの日もストップ高の１００円高で値上がり率１位。駐車場運営のパーク２４＜4666＞は決算で過去最高の営業利益をあげたのが好感されて昨年来高値更新の９９円高で値上がり率１８位。東ソー＜4042＞はリチウムイオン電池の発火を防ぐ新素材を開発したと報じられこれも昨年来高値を更新し１０円高で、売買高ランキング１１位に入っている。値上がり率６位のサニックス＜4651＞は４０円高で１２日から９日続伸継続中だ。
今日の主役は日米首脳会談でアメリカからの輸入がスムーズに認められるかが焦点になっている「シェールガス」関連銘柄。朝から買いが集まって上昇し、ポンプを製造する丸山製作所＜6316＞は２５円高で値上がり率ランキング２位、ＬＮＧ貯蔵用タンクを製造する石井鐵工所＜6362＞は１７円高で同１０位、エンジニアリングの三井海洋開発＜6269＞は１６６円高で同１３位、ＬＮＧ貯蔵用タンクを製造するトーヨーカネツ＜6369＞は１６円高で同１８位に入った。安倍首相は安価なシェールガスの対日輸出を要請するが、アメリカ側が「聖域なき関税撤廃」が前提条件と主張するＴＰＰの問題と切り離して取り扱ってくれるかどうかはわからない。（編集担当：寺尾淳）
