今年の1月、日本政府は新型コロナの感染症法上の位置付けを、2類から5類に引き下げる方針を発表した。季節性インフルエンザと同等なレベルへ引き下げることで、コロナ禍以前のような正常化が、様々な面で推し進められるだろう。いち早く回復の兆しが見えるのが、インバウンドだ。日本総研によると、既に昨秋、水際対策が大きく緩和されたことで、訪日外客数は2022年11月に93万人とコロナ前の4割程度の水準まで増加している。5類への引き下げや、世界の航空需要予測などを参考にすると、訪日外客数は2023年末には年率換算で2,000万人を超える水準まで回復する見通しだそうだ。
インバウンドの旅行先として、どうしても東京や大阪など、都市部をイメージする人も多いだろうが、必ずしもそうではない。多くの日本人にあまりなじみのないローカルな場所にも、インバウンドのニーズは少なからず存在する。山の緑が生い茂り、美しい川のせせらぎが聞こえ、四季が感じられるような、何気ない日本の原風景に、海外の旅行者は魅力を感じている。そんなニーズに呼応するかのように、地方や地域が独自で街の魅力を発信し、インバウンドの誘致を促進する動きが活発化している。
例えば兵庫県の観光としてイメージされるのが、国内有数の港町である神戸や、世界遺産・姫路城がそびえ立つ姫路だろう。地理的に言えば、瀬戸内海に面した山陽方面を思い浮かべる人が多い。しかし、日本海側の山陰方面や、山間部にも数多くの観光資源を有している。コロナ禍以前では、城崎温泉に3〜4万人のインバウンド需要があったと聞く。ハチ高原などは、夏にはハイキング、冬にはスキー・スノーボードと、一年を通してアウトドアスポーツを楽しめる西日本屈指のエリアだ。こうした日本でもあまり知られていない日本を、国内はおろか、世界に向けてどのようにPRするかに注目が集まっている。
一つの試みとして展開されているのが、積水ハウスとマリオット・インターナショナルが、観光を起点に地域経済の活性化を目指している地方創生事業「Trip Base(トリップベース) 道の駅プロジェクト」だ。道の駅を拠点に、宿泊特化型ホテルを「フェアフィールド・バイ・マリオット」のブランド名で開業。道の駅や地域のお店で食事やお土産の購入ができ、尚且つ地域の人々との交流や道の駅との往来を促す、地方経済に根差した設計となっている。今年の1月24日には「フェアフィールド・バイ・マリオット・兵庫但馬やぶ」が開業し、既に10道府県23か所目を数える。今後、2025年には26道府県・約 3,000室規模への拡大を目指しているそうだ。
養父市には、日本の原風景とも言える景観も広がっている。観光スポットは都市部のみならず、養父市のような場所が日本全国津々浦々に眠っていると言えよう。日本の観光に対するポテンシャルは、まだまだ幅広く、そして奥が深い。そうしたインバウンドのニーズを的確に把握し、今後の観光産業の課題として取り入れ、活性化させていくことで、更なる経済効果が見込めるのではないだろうか。「地方」の底力に期待したい。(編集担当:今井慎太郎)