昨今、安全証明がない海外の家電による事故が増加している。国内では電気用品安全法等の法律によって、電気・ガス用品は「PSマーク」がついていない商品は販売できない。これはメーカーや輸入業者等が安全性を保障しているもので、もちろん海外から輸入され、日本の消費者に販売する場合も例外ではない。
しかし重大製品事故のうち、誰でも購入しやすいネット通信販売で入手した商品が占める割合が増加しており、2021年の重大製品事故の1042件のうち実に76件。2011年と比べるとその割合は7倍にのぼる。入手経路が判明している事故のうち16.2%を占め、過去最高となっており、しかも実際には更に多いと思われる。
というのも、メーカーや海外事業者は自社製品が関連すると思われる重大事故が起こったと把握した際、国に報告する義務があるのだが、海外事業者が報告を怠っている場合が少なからずあるとみられているからだ。総務省消防庁からの情報をもとに経産省が推計したところによると、こうした事故が2022年度単独でも約100件報告されていないという。
こうした事態に対し、経産省が規制強化のため検討を進めている。ちなみに欧州連合(EU)は日本に先行してネット通販における消費者保護のための規則の改正案を作成しており、海外製品の責任者やサイトの表示義務を盛り込んだ。もちろん重大製品事故が発生したことが判明した場合は、国への報告義務も負うとしている。
日本でも電気用品安全法等4法で指定されている品目を販売する際は国内に責任者を置くよう求め、重大製品事故が起きた際は報告を義務付けるという方法で再発防止を狙う。
また、2020年からネットパトロールにより、インターネット上の違法な商品の監視も強めている。楽天、Amazon、Yahoo!をはじめとするECサイト8社に対して、モバイルバッテリー等のリチウムイオン蓄電池や携帯用のガスコンロ、レーザーポインターといった出品商品について、表示基準を遵守しているかの審査を徹底するよう要請した。
これに伴いECサイト運営者も出品者から製品の画像を提出してもらい、製品にPSマークがついてない場合は販売をストップしているというが、違法出品を完全に防ぎきれているとはいえない。
2021年にリチウムイオン蓄電池を中心に調査した際も、該当する604件のうち出品者に問い合わせても商品について照会できないケースが190件にのぼった。大多数が海外からの出品だったという。同年10月には千葉県で、ネット通販で購入した海外製のモバイルバッテリーから出火して住宅の一部を焼く火災があった。購入したサイトの運営者に購入品のメーカーを問い合わせたものの、特定できていない。
こうした事故が発生した際、国内に輸入事業者を置いていない場合は製造元まで辿りつけないケースが多い。損害賠償請求のためには事業者と交渉する必要があり、現状では泣き寝入りとなってしまう。経産省による早急かつ具体的な対策が求められている。(編集担当:久保田雄城)