睡眠時間の短縮が肥満リスクを増加させる 花王らが解明

2017年01月15日 09:41

 ヒトの睡眠について、これまでの疫学研究では、睡眠時間が短いと肥満のリスクが高まることが知られていたが、睡眠時間がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響については、さまざまな研究成果があり、そのメカニズムについては明確になっていなかった。

 花王<4452>ヘルスケア食品研究所と早稲田大学スポーツ科学未来研究所との共同研究グループは、睡眠時間の短縮が、食欲抑制ホルモンの減少や空腹感の増加などの食欲に影響し、肥満リスクを増加させるメカニズムを解明した。

 研究は、睡眠時間を半分にする生活がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響について、若い健康な男性9名を対象として、メタボリックチャンバーを用いて試験を行った。対象者は若い健康な男性9名(平均年齢23.2歳、平均BMI22.2)。試験方法はダブルブラインド・クロスオーバー試験(二重盲検交差比較試験)。測定装置はメタボリックチャンバー(部屋型の代謝測定装置)、脳波測定計、直腸温度計。測定項目はエネルギー消費量、基質利用量、深部体温(直腸温)、血液検査、食欲アンケート(VAS)。試験条件は決まった食事の生活をする中で、2週間の休止期間を挟んで、次のAかBの試験条件をランダムな順番で行った。試験条件A は3日間7時間睡眠を行ない、3日目の7時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響をメタボリックチャンバーで測定。試験条件B は3日間3.5時間睡眠を行ない、3日目の3.5時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響をメタボリックチャンバーで測定。

 この結果、睡眠時間の短縮は、夜間のエネルギー消費量の増加にもかかわらず、1日のエネルギー消費量や脂質利用量には影響を与えなかった。また、3日間の睡眠時間の短縮には食欲抑制ホルモンであるPYYの減少や1時間ごとに測定された空腹感の増加などの食欲への影響が明らかになった。さらに、直腸で測定された深部体温は、睡眠時間の短縮によって有意に低下し、深部体温の日内リズムに影響することが明らかになった。

 研究では睡眠時間の短縮が、エネルギーバランスに影響していることを48時間にわたる代謝測定から明らかにした。これまでに議論されていた睡眠時間の短縮がなぜ肥満リスクを増加させるのかという問いに対して、この研究はエネルギー代謝の面からの生理学的メカニズムの一つを提供したものと考えられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)