デザインは社会を変える? 災害復興から木造建築の未来まで、2025年度グッドデザイン賞

2025年11月09日 09:55

 公益財団法人日本デザイン振興会は10月15日、2025年度のグッドデザイン賞(Gマーク)受賞作品を発表した。今年も、日用品から建築、社会システムに至るまで、幅広い分野から「これからの社会をより良くするデザイン」が選出されている。

 グッドデザイン賞を受賞することで何が変わるのか? これは多くの人が抱く疑問かもしれない。まず、受賞作品は品質とデザイン性が保証された製品として「Gマーク」の使用が可能となる。これは競合製品との明確な差別化になるとともに、消費者にとっても信頼できる商品を選択しやすくなる。また、グッドデザイン賞のサイトなどをはじめ、各種メディアでの露出機会も増えるので、商品の認知向上や販売促進に寄与する。さらに、デザインを通じて社会課題の解決に取り組む社会的意義を持つ企業としての評価が高まることも期待できる。

 そんなグッドデザイン賞の歴史は戦後の日本経済の復興期である1957年(昭和32年)にまで遡る。当時、日本の輸出品に対するデザイン模倣が問題となっており、通商産業省(現・経済産業省)が、単に「ものの美しさ」を競うだけでなく、「意匠の奨励」を通じて、産業の発展とくらしの質を高めるデザインを見出し、広く伝えることを目的に創設した「グッドデザイン商品選定制度」(Gマーク制度)が前身となっている。以来、約70年以上にわたって「よいデザイン」を顕彰し続けてきた。デザインといえば「見た目」を思い浮かべることが多いが、グッドデザイン賞の評価基準はそれだけに留まらず、製品やサービスが生活に対して与える利便性・安全性、そして社会への意義といった、目に見えない要素を含めて総合的に判断されているのが特徴だ。

 今年も審査委員会の厳正な審査により、5,225件の審査対象の中から、1,619件の受賞を決定。今回の受賞作品はとくに、人々の生活様式の変化やサステナビリティへの意識の高まりを反映したものが多く見受けられた。

 例えば、今年のグッドデザイン大賞に選出された、建築家の坂茂氏らが手がけた「DLT木造仮設住宅」は、CLT(直交集成板)に似た新技術であるDLT(ダボ接合木材)を使用した箱型のユニットを積み重ねることで、一般作業員でも迅速に建設できる上、解体せずに恒久的に使える仮設住宅だ。天然の木の香りが漂う空間は、被災者の心のケアにも配慮されたデザインとなっている。環境負荷が低く、災害復興における先進性と安全性、そして高い居住性が総合的に評価されての大賞受賞となった。金賞には、沖縄発の超小型モビリティ「AIM EVM」(エイム株式会社)や、軽量・強靭なカーボンファイバーをフレームに採用した世界最軽量4.8kgの歩行器「バイエーカー カーボン・ウルトラライト」(バイエーカー・エーピーエス)などが選出されている。

 また、AQ Groupが手掛けた純木造8階建て本社ビルおよび純木造4階建てマンション「AQ FOREST 大宮桜木町」は、日本古来の在来軸組工法を基盤とし、特殊な工法に頼らず、誰もが扱いやすい「普及型」モデルとして開発。日本の伝統技術と現代の課題解決を見事に融合させただけでなく、国産間伐材などを活用することで、CO₂削減や森林循環の促進に貢献する社会的意義のある取り組みとして、「普及型の中大規模木造建築」の実現が高く評価されている。ちなみに同社は今回で14年連続の受賞を果たすなど、継続的に「よいデザイン」の開発に尽力している。

 グッドデザイン賞のサイトでは、ここに挙げた他にも、様々な素晴らしいデザインの受賞作品が紹介されている。その中にはきっと、あなたの生活を豊かにしたり、ビジネスのヒントや参考になったりするようなデザインが見つかることだろう。ぜひ一度、サイトを訪れてみてほしい。(編集担当:石井絢子)