「若者の保守化」と出生率の不思議な関係

2013年03月05日 19:12

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内閣府の意識調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」と考える20代男性が55.7%に達した。

 内閣府の意識調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」と考える20代男性が55.7%に達した。結婚相談大手「ツヴァイ」では27歳以下に向けた低料金コースを設けたこともあり、今年度前半の20~24歳の新規入会者は前年同期の3割増しだった 。若い女性の間でも専業主婦志向が高まっており、このような状況は一般的に「若者の保守化」と考えられている。

 しかし北欧やアメリカ、フランスなどでは共働きが増えると同時に出生率が回復しており 、この事例に照らし合わせると、保守的な結婚観を支持する日本の若者が生む子どもの数は減ってしまうことになる。

 ところが国立社会保障・人口問題研究所の「第14回出生動向基本調査」によると、伝統的な考え方をもつ女性の方が、生涯に生む子どもの数が多くなることが分かった。特に妻が「結婚しても自分の目標を持つべき」に反対し、「結婚したら子どもを持つべき」「結婚に犠牲は当然」「夫は仕事、妻は家庭」などに賛成している夫婦の場合、出生意欲が高めとなっている。共働きで互いに自立という昨今の流れには逆行するようだ。

 90年代には全体的に、このような古い価値観を支持する人は減っていく傾向にあった。しかし2000年代以降はその流れが止まり、変化の方向が反転した項目も多い。たとえば「生涯独身は望ましくない」「同棲するなら結婚すべき」「男は仕事、女は家庭」「結婚に犠牲は当然」などの項目では、2000年代に入り伝統的な考え方へと回帰している。

 伝統回帰の是非はともかく、そのような女性が増えているにもかかわらず、実際には2010年、夫婦の完結出生児数は初めて2人を割り込み、1.96人まで低下した。産みたい子どもの数を実現できない理由として最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」。とりわけ若い世代でこうした経済的理由を選択する割合が高い。

 保守的な20代が増えているのなら、今後、彼女たちの生む子ども数は回復する可能性もある。しかしその前に悪化する若者の経済事情が好転しないことには、出生率が劇的に回復することはないだろう。