中東情勢で企業の8割が危機感 「価格高騰」から「調達難」へ懸念シフト

2026年06月10日 16:06

今回のニュースのポイント

東京商工リサーチ(TSR)が実施した追跡調査によると、中東情勢の緊迫化が事業活動に「マイナスの影響がある」と回答した企業が80.6%に達したことが分かりました。調査結果からは、これまでの「原油・原材料の価格高騰」に対する警戒感にとどまらず、「原材料の調達難」という供給リスクそのものへ企業の懸念がシフトしている実態が浮き彫りとなっています。これを受け、すでに経営戦略の見直しに踏み切った企業は24.0%に急増しており、サプライチェーンの再構築が現実の企業行動として動き出しています。

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 中東情勢の緊迫化が長期化するなか、国内企業の事業活動における危機感が一段と高まっています。東京商工リサーチが公表した「第2回中東情勢に関するアンケート調査」によると、中東情勢が事業活動に「マイナスの影響がある(含む予定・懸念)」と回答した企業は、前回調査の78.7%から80.6%へと上昇し、8割を超えました。規模別に見ると、グローバルなサプライチェーンを持つ大企業ほど動向に敏感であり、大企業の「マイナス影響あり」の回答割合は86.3%に達して中小・中堅企業を上回る水準となっています。製造業や輸送業を中心に、事業経営全体への広範なインパクトを警戒する姿勢が数字に表れています。

 今回の追跡調査における最大の特徴は、企業が受ける負の影響の中身が「価格問題」から「供給・調達問題」へと明確にシフトし始めている点です。具体的な影響内容として、「原油由来の素材・原材料の高騰によるコスト増」を挙げる企業は73.3%と依然として高水準であり、コスト負担への警戒は根強く残っています。しかし、同時に「原材料の調達難」を指摘する企業が59.7%と、前回調査から14.2ポイントも急上昇しました。これは、単に「価格が高い」というコスト面での課題にとどまらず、「必要なモノが安定的に手に入らない」「数量制限や出荷停止への懸念」といった、調達網そのものの維持に対する不安が企業の関心の核に移ってきたことを明確に示しています。

 一方、マクロ経済政策の効果を客観的に評価するうえで注目されるのが、燃料高騰懸念の局所的な変化です。前回調査でマイナス要因として2番目に多かった「ガソリン価格の高騰」を懸念する企業は64.8%でしたが、今回の調査では40%台前半へと下落し、約23.5ポイントの大幅な低下を記録しました。この背景には、政府が導入した「1リットルあたり最大10円の定額補助」による価格抑制策が一定の効果を発揮し、ガソリン価格の急激な跳ね上がりが抑え込まれている実態があります。ただし、企業からは「現行の燃料価格自体がなお重い負担であり、補助金によって最悪の事態やパニック的な価格上昇が緩和されているにすぎない」との冷静な声も多く、政策効果の恩恵を受けつつも楽観視はできない経営環境が続いています。

 中東リスクの長期化を見据え、企業の意識は一時的な静観から「具体的な戦略変更」へと現実に動き出しています。今回の調査において、中東情勢を受けて「すでに経営戦略を見直している」と回答した企業は、前回の15.2%から24.0%へと大きく増加しました。検討段階を終え、実際の行動に変容が見られる企業が全体の4分の1近くに達しており、調達先の分散(マルチソース化)や在庫積み増し基準の見直し、物流ルートの変更、燃料サーチャージの導入や価格転嫁方針の再設計など、サプライチェーンと価格戦略の両面で中長期的な防衛策を講じる動きが広がっています。

 これまで中東リスクといえば「原油価格が上昇し物価が上がる」という側面が中心課題として議論されてきました。しかし、原材料高騰(73.3%)と調達難(59.7%、14.2ポイント上昇)のデータが示す通り、現在の企業が直面しているのは「必要なモノが、いつまで、どこから入ってくるのか」という供給網の連続性に関する構造リスクです。価格変動への対応に加え、調達先の分散や在庫管理を含めたサプライチェーン全体の見直しが、中東情勢への企業対応の中心課題になりつつあります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)