税収は過去最高なのになぜ減税できないのか 国税庁資料が映す財政の現実

2026年06月23日 08:07

国会議事堂18

税収は過去最高水準に達している一方、減税を巡る議論は続いている。背景には社会保障費の増加や地方財政への影響など複雑な課題があり、国会では財源と国民負担の在り方が改めて問われている。

今回のニュースのポイント

国税庁が公表した「令和7年度 租税及び印紙収入予算の概要」の関連資料では、税収が高水準で推移する見通しが示されています。企業業績の改善や物価上昇を背景に、法人税や消費税を中心に税収は拡大しています。しかし一方で、物価高や社会保険料負担の増加により、多くの生活者は景気回復や税収増加の恩恵を実感できていません。税収が増えているのに減税議論が進まないのはなぜなのか。国の財政構造から読み解きます。

本文
 国税庁が公表した「令和7年度 租税及び印紙収入予算の概要」によると、一般会計税収は高水準で推移する見通しとなっています。所得税、法人税、消費税の主要3税が全体の税収を支え、税収規模は過去最高水準に達しています。景気の緩やかな回復基調を背景に、国家の金庫に集まる税金そのものは確実に増加傾向をたどっています。

 税収が増加している背景には、日本経済の構造変化が大きく影響しています。まず法人税においては、円安の恩恵を受けた輸出企業や非製造業の堅調な企業利益の増加が税収を力強く押し上げています。所得税については、近年の官民を挙げた賃上げの動きが反映され、納税額のベースが底上げされました。消費税においては、旺盛なインバウンド(訪日外国人客)需要に加え、長引く物価上昇にともなって商品の額面価格が上がったことが、結果として税収の押し上げに寄与しています。つまり、純粋な経済成長だけでなく、インフレという要素も税収増の大きな要因となっているのです。

 これほど税収が増えているのであれば、国民負担を軽減するための減税に踏み切れるのではないかという声が上がるのは自然なことです。しかし、ここで専門家が指摘するのは、税収増加と財政余力は必ずしも同義ではないという冷徹な現実です。税収という「入り」が増えていても、国が支出しなければならない「出」の側もそれ以上に膨らんでいるためです。急速に進む少子高齢化に伴う医療や年金などの社会保障費の自然増に加え、防衛費の拡充、さらには過去に発行した国債の利払い費といった構造的な財政負担が重くのしかかっており、増収分はそれらの補填に吸収されているのが実態です。

 ここに、国が発表するマクロな数字と、生活者が日々直面するミクロの実感との深刻なギャップが生まれています。株価の歴史的な高値圏や税収の過去最高という景気の良いキーワードが並ぶ一方で、生活者の手元では物価高による生活費のかさ上げや、社会保険料の段階的な引き上げ、さらには実質賃金の伸び悩みといった負担感が先行しています。経済指標や国家財政の見た目の数字がいかに好転していても、それが国民一人ひとりの可処分所得の増加や豊かさの実感へと直接結びついていない構造が浮き彫りになっています。

 地方財政審議会を巡る議論でも示された通り、例えば消費税を単純に減税しようとすれば、その税収の約4割を財源としている地方自治体の財政が圧迫されるという別の課題も浮上します。日本経済は税収や企業利益、株価といった特定の側面では改善を見せているものの、本当に問われているのはその果実を社会全体へどのように「分配」するのかという設計図です。税収が過去最高水準にあるという事実は、国に資金が潤沢にあることを意味するのではなく、集まった富をどのように国民生活の安定や持続可能な社会インフラへと還元していくのかという、新たな国家の課題を突きつけていると言えそうです。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)