「ROEだけでは企業は成長しない」 経産省が示した新たな企業価値の考え方

2026年07月22日 07:21

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経済産業省が公表した「成長投資ガイダンス」は、ROE(自己資本利益率)だけでなく、ROIC(投下資本利益率)やEP(経済的付加価値)なども活用し、中長期的な価値創造を重視する経営への転換を促している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

経済産業省が公表した「成長投資ガイダンス」では、企業価値を評価する考え方として、ROE(自己資本利益率)だけでなくROIC(投下資本利益率)やEP(経済的付加価値)など複数の指標を活用しながら、長期的な価値創造を重視する姿勢が示されました。企業には資本効率を高めるだけでなく、設備投資や研究開発、人材への投資を通じて将来の成長につながる経営が求められています。企業は具体的に何を変えるべきなのか、新たな指針が提示する経営モデルの骨子を整理します。

本文
 これまでのガバナンス改革において、企業価値を示す中心的な指標として活用されてきたのがROE(自己資本利益率)です。株主から預かった資本をどれだけ効率よく利益に変えたかを示すROEの向上は、日本企業の経営意識を変え、収益性の改善や株価の上昇に大きく貢献しました。しかし、ROEは自社株買いによる株主資本の縮小やコスト削減によっても短期的に数値を押し上げることが可能であり、それだけでは将来に向けた持続的な事業拡大や企業の「稼ぐ力」そのものの強化を十分に測りきれないという課題も浮き彫りになりました。

 こうした背景から新ガイダンスが提示するのが、事業に投じたすべての資本に対する収益性を示す「ROIC(投下資本利益率)」と、資本コストを上回る経済的利益の「総量」を示す「EP(エコノミック・プロフィット:経済的付加価値)」の活用です。資本調達の構成に左右されにくいROICで現場の稼ぐ力を測り、調達コスト(WACC)との差分(スプレッド)に投下資本量を掛け合わせたEPで「創出された価値の面積」を把握します。単に数値を上げるための縮小均衡ではなく、投資の「質」と「量」を同時に拡大していくことが、真の企業価値向上につながるという考え方です。

 この新たな評価軸の下で、経産省は企業に対して経営の仕組みそのものを転換することを求めています。人件費を単なるコストではなく未来の資産と捉える「人的資本投資」や、研究開発、ブランドなどの無形資産への積極的な資本投入がその中心です。また、事業ごとに収益性と成長性を見極め、最も企業価値を高められる事業主体の下に再編する「ベストオーナー原則」に基づくポートフォリオ改革や、将来3〜5年の資金配分を示す「中長期キャピタルアロケーション」の明確な開示が期待されています。

 経営モデルの転換を実効的なものとするためには、資金の出し手である投資家側の変化も不可欠です。新指針では、投資家に対しても単年度の業績低下や表面的な指標のみにとらわれた形式的な議決権行使を避け、企業の説明を踏まえた実質的な判断と対話(エンゲージメント)を行うよう求めています。投資初期に一時的に指標が悪化するリスクを許容し、中長期的な成長投資を後押しできる環境を整備することが、企業と投資家双方の共通課題として掲げられています。

 今回のガイダンスが目指すのは、指標の数値を追うための経営から、成長投資を通じて自ら新たな価値を生み出す経営への抜本的なシフトです。短期利益の追求から中長期的な価値創造全体へと評価の軸足が移る中で、官民が連携してこの新経営モデルを現場に定着させられるかが、今後の日本企業の国際競争力を左右することになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)