今回のニュースのポイント
NEDOやジャパンエンジン、川崎重工などは8日、大型商船向け水素燃料エンジン「6UEC35LSGH」の陸上運転試験に成功したと発表しました。ジャパンエンジンによると世界初で、工場運転では水素混焼率95%以上、従来の重油燃料エンジン比でGHG排出量95%以上削減を達成。2027年1月に1万7500重量トン型の多目的船へ搭載し、海上試運転を経て2028年4月から実船実証を開始する計画です。大型商船を水素で動かす技術が、陸上試験から実船へ進みます。
本文
NEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」の一環として、ジャパンエンジンコーポレーション、川崎重工業、ヤンマーパワーソリューションの3社が推進してきた大型商船向け水素燃料エンジン「6UEC35LSGH」が完成し、ジャパンエンジン本社工場での陸上運転試験に成功しました。発表によると、今回完成したエンジンは工場運転において、燃料に占める水素の割合を示す「水素混焼率」で95%以上を達成しました。これにより、工場運転では、従来の重油燃料エンジンとの比較において、GHG排出量を95%以上削減したとしています。なお、「世界初」の表記についてジャパンエンジンは「2026年9月現在、自社調べ」と注記しています。また、GHG95%以上削減という数値も製造時を含めたライフサイクル全体ではなく、あくまで工場でのエンジン運転時における従来重油エンジンとの比較値です。
大型商船向けのエンジンで水素を安定して燃焼させるため、今回のエンジンでは「高圧直噴方式」が採用されました。高い圧力で水素燃料をシリンダー内へ直接噴射することで、安定した燃焼性能を実現しています。また、水素を安全に扱うため、堅固な水素漏えい防止構造や、水素供給配管への二重管の適用といった構造上の安全対策が講じられました。一般財団法人日本海事協会(ClassNK)の立ち会いのもと、承認に向けた運転試験が実施され、問題なく完了したことが確認されています。今後も設計・建造・運航の各段階で評価が継続されます。
大型商船を水素で動かすためには、エンジン単体だけでなく、燃料の調達から船内保持、供給に至るシステム全体の一体開発が不可欠です。今回のプロジェクト(プロジェクト名:Blue Harmony)では、川崎重工業が「MHFS(舶用水素燃料タンクおよび燃料供給システム)」の開発・製造を担当しています。さらに、陸側から船へ液化水素を安全に積み込むための「バンカリング設備」の開発・製造も川崎重工が担います。液化水素を船舶へ積み込み、MHFSで水素燃料を貯蔵・供給し、エンジンで直接噴射・燃焼させるための一連のシステム開発が進められています。
陸上試験を終えたエンジンは、実際の航海環境へと舞台を移します。本エンジンは、商船三井および商船三井ドライバルクが尾道造船にて建造を進める「1万7500重量トン型」の多目的船に搭載される予定です。行程計画では、2027年1月に船体へのエンジン搭載を行い、その後の海上試運転を経て、2028年4月から実船実証試験が開始されます。2028年からの取り組みは商業運航(実用化)そのものではなく、実運航条件下での耐久性などを検証する「実船実証」の位置付けとなります。
ジャパンエンジンは2025年8月に、純国産の商用機として世界初となる「アンモニア燃料舶用低速2ストロークエンジン」を完成させています。今回の水素エンジンの完成により、国際海運が目指す2050年のカーボンニュートラルに向けた次世代燃料エンジンの選択肢がさらに広がることになります。大型商船を水素で動かす試みは、工場内での単体性能確認を終え、2028年の実船実証に向け、陸上試験から実際の船へ移る段階に進んでいます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













