生成AIは、ソフトウェア開発支援に加え、脆弱性診断や脅威分析などサイバーセキュリティ分野での活用が広がりつつあります。社会インフラの安全性向上に向け、AIと人間の専門家が役割を分担する新たなセキュリティ運用への期待も高まっています。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
日立製作所は、Anthropicが推進するAI活用型セキュリティプログラム「Project Glasswing」に参画し、先進AIモデル「Claude Mythos Preview」を用いた重要インフラ向けソフトウェアの脆弱性診断を実証しました。数百万行規模のソースコード解析や脅威モデル作成を大幅に効率化し、AIと人間の専門家を組み合わせた新たなセキュリティ運用の有効性を確認しています。
本文
株式会社日立製作所は7月28日、米Anthropicが主導するサイバーセキュリティプログラム「Project Glasswing」において、先進AIモデル「Claude Mythos Preview(以下、Mythos)」を活用した社会インフラ向けソフトウェアの脆弱性診断および検証プロセスに関する実証成果を公表しました。
グループ内の100以上のユースケースを対象に実証を実施し、深刻度の高い潜在的な脆弱性の特定や、開発・運用プロセスにおけるセキュリティ強化の有効性を確認しました。
今回の実証では、数百万行規模に及ぶ膨大なソースコードや外部公開APIに対し、Mythosを適用しました。その結果、従来はセキュリティ専門家や開発者が数週間をかけていた脅威モデルの作成を数時間で実行できることを確認しました。
また、従来のAI診断で課題となっていた「誤検知による人的検証コスト」に対し、Mythosは実機動作検証用のテストコードや脆弱性の再現手順を自律的に生成するアプローチをとりました。スキャン時点で誤検知をチェックすることで検出精度が向上し、開発者の検証負荷が大幅に軽減される成果を得ています。日立はこれらの結果に基づき、是正対応や製品アップデートを順次進める方針です。
これまで生成AIの産業利用においては、文書作成やプログラムコードの生成、開発業務の効率化といった機能に注目が集まっていました。
しかし、AIの進化に伴ってサイバー攻撃の手法も高度化・巧妙化しており、ソフトウェアの複雑化や専門人材の不足も重なって、従来の防衛手法だけでは限界が指摘されています。こうした背景から、現在AIは単なる開発支援にとどまらず、ソフトウェアのセキュリティ診断や検証を支援する用途へと活用が広がり始めています。
今回の実証で注目されるのは、単にAIによって診断作業を自動化したことではありません。
最大の特徴は、大規模なデータ解析やコード生成を自律的にこなすAIによって、人間のセキュリティ専門家の能力を大きく拡張する仕組みが構築され始めた点にあります。日立のコメントでも示されている通り、AIが広範囲の解析を高速に担う一方で、最終的なリスク判断や評価には人間の専門家が不可欠となります。AIと人間の専門家が明確に役割を分担し、それぞれの強みを融合させることが、今後の防衛体制の鍵となります。
このような取り組みが進めば、電力や鉄道、金融、医療、行政といった重要インフラ分野を中心に、ソフトウェアの開発初期段階からAIによる脆弱性診断を組み込む「シフトレフト(開発の早い段階でセキュリティ対策を実施する考え方)」などの実運用への展開が進む可能性があります。
社会インフラを担う企業にとっては、システムの導入・更新における「開発スピード」だけでなく、サイバー攻撃に対する高い「堅牢性・安全性」をいかに効率的に確保できるかが重要な要素になりつつあります。
日立は今後、今回の検証で得られた知見やノウハウを、社会インフラ向けソリューション群「HMAX by Hitachi(HMAX)」などの開発・運用プロセスへ順次展開していく方針です。
高度化するサイバー脅威に対し、AIをどのように実運用の防衛プロセスへ組み込んでいけるのか、そして人間との役割分担やインフラの安全基準をいかにアップデートしていくかが、今後の社会インフラデジタルの大きな焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













