空港を発着する航空機。三菱総合研究所は、航空交通の遅延が複数の要因や交通流全体の相互作用によって生じると指摘し、AIなどを用いた高度な分析・可視化を関係者の議論や合意形成に活用する必要性を提言している。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
三菱総合研究所は14日、航空交通の定時運航に向けたAI活用に関するコラムを公表しました。航空交通の遅延は利用者の利便性低下のみならず、燃料費や運航コストの増加にも関わる課題であるとし、多数の航空機や空域が複雑に絡み合う交通流の相互作用をAIによる分析で把握し、関係主体間の合意形成に活用する必要性を提言しています。今回の公表は新システムの実用化や遅延削減効果を確認した実証結果ではなく、意思決定におけるAI分析の役割や議論体制の整備を整理した論考となります。
本文
株式会社三菱総合研究所(MRI)は2026年9月14日、航空交通管理におけるAI分析の活用と関係者間の意思決定を主題としたコラムを公表しました。本公表は新たなAIシステムの導入決定や遅延削減の実証成果を発表したものではなく、航空交通の定時性維持に向けたAI活用のあり方について分析・提言を行ったものです。
コラムの中でMRIは、航空機の遅延が到着を待つ利用者の不便にとどまらず、航空会社における燃料費の追加消費や運航コストの増加といった経済的負担にも関わると指摘しています。一方で、航空機の遅延は複数の要因が複合的に作用して発生し、その遅延が連鎖する場合もあります。MRIは、個別便だけでは原因を捉えにくく、計画上の前便や到着順序上の前便など、交通流全体の相互作用を把握する必要があると指摘しています。
この課題に対し、MRIは、意思決定を支えるためには高度な分析・予測技術によって施策の効果や影響を可視化することが不可欠だとしています。その上で、分析やシミュレーションを関係者が議論するための合意形成ツールとして活用する考え方を示しています。またMRIは、全体遅延の最小化や空港混雑の抑制、航空会社間の公平性、乗継旅客への影響、環境負荷低減など、何を重視するかによって望ましい運用は異なり、こうした価値判断はシステムだけで自動的に決まるものではないとしています。
さらに、MRIは技術的な分析手法の提示にとどまらず、関係者間における「合意形成」の重要性を強調しています。航空交通の現場には、運航を行う航空会社、空港を管理する事業者、管制や交通管理を担う行政機関など、異なる役割を持つ複数の主体が存在します。単に高度なデータ分析結果が得られたとしても、それだけで現場の運航調整が完結するわけではありません。MRIは、AI等による分析結果を基に、航空会社、空港、管制、行政、研究機関などの複数の関係主体が望ましい運用を議論し、協働して意思決定を行うための基礎材料として活用していく必要性を指摘しています。
コラムの終盤においてMRIは、より遅延を減らす能力の高いシステムが今後開発されることへの期待に触れつつも、国際的な議論への対応について言及しています。MRIは、日本では十分な議論ができておらず、日本に不都合なルールが決められるリスクがあるとの見方を示しています。そのため、AI技術の進展により分析の障壁が下がりつつある今こそ、高度なデータ分析を活用した議論・合意形成の体制を整備すべきであると提言しています。
航空交通の遅延がもたらすコスト課題に対し、AIによる分析技術をどのように実際の組織・制度の意思決定に組み込んでいくか。三菱総研は、分析結果を基に関係者が望ましい運用を議論し、その内容を将来の交通流管理システムや管制支援システムへ反映するための議論体制が必要であると論じています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













