充電中の電気自動車(EV)。大阪ガスとオリジンは、充電しながらEVバッテリーの劣化状態を短時間で診断できる可搬式充電器を共同開発し、中古EVの査定精度向上やバッテリーのリユース・リサイクル促進を目指す。
今回のニュースのポイント
大阪ガスとオリジンは、EVバッテリーの劣化状態を充電中に短時間で診断できる可搬式充電器の共同開発を進めます。中古EVではバッテリーの状態を把握しにくいことが流通拡大の課題となっており、診断機能を備えた充電器によって査定の精度向上やリユース・リサイクルの促進を目指します。EV市場は新車販売だけでなく、中古車やバッテリーの価値を適切に評価する段階へ移りつつあります。
本文
大阪ガスとオリジンは7月28日、電気自動車(EV)向けバッテリーの急激な容量低下(二次劣化)の兆候を短時間で把握できる診断機能を備えた可搬式充電器の共同開発契約を締結したと発表しました。
大阪ガスとその子会社であるKRIが開発した独自のバッテリー劣化診断技術と、オリジンの可搬式充放電技術を組み合わせるもので、短時間の充電から得られるデータを用いて二次劣化の兆候や残存能力をその場で判定する業界初の取り組みです。
国内でEVの普及が進む一方、中古EV市場においては「バッテリーの健康状態が見えにくい」ことが流通拡大に向けた大きな課題となってきました。
前オーナーの使用履歴や充放電の負荷、劣化状態が外観や過去の走行データからでは十分に把握できないため、購入後の性能低下や急速な容量低下に対する不安が拭えず、適正な価格査定が行いにくい状況が続いていました。中古EVの取引において、車両本体の年式や走行距離以上に「バッテリーの実際の状態をどう可視化するか」が市場の信頼性を左右する重要な要素となっています。
今回共同開発される技術の強みは、診断の「手軽さ」と「スピード」にあります。
従来の精密なバッテリー診断は、大型の定置型設備や整備工場への持ち込みが必要となるケースが一般的でした。これに対し、今回の装置は可搬式(ポータブル)であるため、設備の設置が難しい中古車ヤードやオークション会場、カーリース業者の車両保管場所などへ直接持ち込み、車両をその場で充電しながら同時に診断を行うことが可能です。短時間の充電データから二次劣化の有無、現在のバッテリーの健康状態(SOH:State of Health)の推定、将来的な劣化予測までを迅速に導き出せる点が特徴です。
この取り組みが提示している本質的な価値は、中古車査定の評価軸そのものが変容し始めている点にあります。
ガソリン車を中心とした従来の中古車市場では、年式、走行距離、修復歴などが価値判断の大部分を占めていました。しかし、原価の大部分をバッテリーが占めるEVにおいては、バッテリーの残存価値こそが車両の資産価値を直接規定します。
市場は「走行距離や外観から車を推測して査定する時代」から、「バッテリーの実際のコンディションを直接診断して適正価値を弾き出す時代」へと変わり始めています。短時間で診断できる技術は、中古EVの流通を支える重要な社会インフラの一つになると位置づけられます。
政府は2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指す目標を掲げており、新車市場の拡大に伴って膨らむ中古EVの健全な二次流通システムの構築は喫緊の課題です。
本技術は単なる中古車の買取・販売査定にとどまらず、カーリース終了後の返却車両の再配置判断や、車体から取り外されたバッテリーのリユース(定置型蓄電池などへの再利用)、あるいはリサイクルへの回送判断など、EVのライフサイクル全体(サーキュラーエコノミー)を支える情報基盤としても機能する可能性があります。
両社は2026年度中に開発する実証版を用いて現場での運用検証を進め、2027年度以降の製品化および新サービスとしての事業展開を目指しています。
今後は、オークション会場や中古車買取店などでこうした可搬式診断技術がどこまで普及するか、そして査定の精度向上を通じて中古EVの残価設定や再流通価格の安定につながるかが、EV市場全体の成長を見極めるうえでの焦点となりそうです。将来的にはこうした技術が、業界における査定方法の標準化を後押しする可能性も秘めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













