国家公務員はAI時代へ 政府が人材改革を本格始動

2026年07月29日 16:20

霞が関

霞ケ関駅。政府は「人口減少社会×AI時代の行政を支える人材改革プラン」を公表し、国家公務員の役割や人材育成、人事制度の見直しを進める方針を示した

今回のニュースのポイント

政府は「人口減少社会×AI時代の行政を支える人材改革プラン」を公表しました。人口減少やAIの急速な普及を背景に、国家公務員に求められる役割やスキル、人材育成、人事管理を見直す方針です。AIを行政業務へ活用するだけでなく、「人とAIの協働」を前提とした行政運営への転換を視野に、有識者会議を設置し、令和9年1月を目途に方向性を取りまとめるとしています。

本文
 政府(内閣人事局)は7月28日、「人口減少社会×AI時代の行政を支える人材改革プラン ~国家公務員バリューアッププロジェクト~」を公表しました。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少とAI技術の急速な進展を背景に、従来の定員削減や単純な業務デジタル化を超えて、国家公務員に求められる役割や育成方法、組織の人材戦略そのものを再設計する狙いがあります。

 少子高齢化によって生産年齢人口の減少が進む中、従来のように「人の労働力」に過度に依存した行政体制のまま、質の高い行政サービスを持続的に維持していくことには限界が生じつつあります。一方で、生成AIをはじめとするテクノロジーの飛躍的な性能向上は、官民を問わず業務の進め方や働き方そのものを大きく変容させています。これまでの行政改革が主に人員の縮小やシステムのIT化に重点を置いていたのに対し、今回のプランは、AI時代を見据えて公務員組織の人材基盤そのものをアップデートする点に大きな特徴があります。

 改革の核となるのが、「人とAIの協働」を前提とした国家公務員の役割と育成方針の再定義です。政府は新たに有識者会議「AI時代の国家公務員の在り方に関する検討会」を設置し、令和8年8月17日に第1回会合を開催します。会議では、AIが行政業務に与える影響や業務の代替性、人とAIの適切な役割分担、AI時代に公務員へ求められる能力やスキル、さらには組織における意思決定の在り方について検討が進められます。令和9年1月を目途に取りまとめを行い、各府省の人事管理や研修施策へ順次反映させる計画です。

 また、人手不足に対応するための人材獲得策も一体的に強化されます。新卒採用においては志望層の早期拡大を図るため、高校生や大学1・2年生を対象とした訪問講演や対面イベントを拡充します。中途採用では、府省合同での広報や認知度向上を進めるほか、合格者が採用予定数に満たない状況が続く技術系職種については、求職者へ直接アプローチするダイレクトリクルーティングの導入を試行するなど、採用手法の柔軟化を図ります。

 行政組織の働き方や組織運営の見直しも盛り込まれました。業務効率化と戦略的人事の基盤として「人事管理支援共通プラットフォーム」を整備し、デジタル化を推進します。あわせて、アンケート調査で相対的に低下がみられた30代職員の「働きがい」向上に向け、対話型マネジメントの導入やキャリア形成支援を強化するほか、多様な生き方に対応するため、短時間勤務の拡大など柔軟な働き方に関する制度的措置について令和12年中に結論を得るとしています。

 今回のプランは、AIを単なる新たな業務ツールとして導入することにとどまらず、人口減少社会において行政サービスを維持するため、「人とAIの協働」を前提に国家公務員の役割や育成、人事制度を再設計しようとする取り組みと位置付けられます。行政DXの次の段階として、人材政策まで含めた制度改革が本格化するかどうかが今後の注目点です。

 今後は、令和8年8月に発足する有識者会議での議論を経て、令和9年1月に示される取りまとめが、実際の公務員制度や各府省の人事運用へどのように反映されていくかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)