観光は「集客重視」から転換 料金見直しで持続可能な地域づくりへ

2026年07月29日 18:27

画・新型コロナウイルスの影響、訪日客意識調査。旅程の変更はしなかった、96%など。

観光需要の回復やインバウンドの増加を背景に、各地で混雑緩和や観光資源の維持管理を目的とした料金制度の見直しが進められている。(写真はイメージ)

今回のニュースのポイント

観光庁は、観光施設やサービスの料金設定に関する調査・研究会のヒアリング結果を公表しました。近年の観光需要の回復やインバウンドの増加を背景に、各地では駐車場や観光バス、文化施設などの料金を見直す動きが広がっています。料金を単なる収益確保ではなく、混雑緩和や観光資源の維持管理、地域住民との共存を実現する政策手段として活用する事例が紹介されており、観光政策は「集客」から「持続可能性」を重視する段階へ移りつつあります。

本文
 観光庁は7月29日、「観光施設・サービス等の料金設定等に関する調査・研究会」のヒアリング結果のポイントを公表しました。駐車場や観光バス、文化施設、登下山道など全国7つの先進事例を分析したもので、料金を単なる利用料ではなく、混雑緩和や観光資源の維持管理、受け入れ環境の整備につなげる取り組みを整理しています。観光需要の堅調な回復が続く中、料金は混雑緩和や観光資源の維持管理を支える役割も担うようになっています。

 料金見直しの背景には、国内およびインバウンド双方で高水準が続く観光需要があります。観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2026年1〜3月期の日本人国内旅行消費額は5.9兆円(前年同期比4.8%増)となり、比較可能な2010年以降の1〜3月期として過去最高を更新しました。また、2025年の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円に達し、訪日外国人客数が初めて4,000万人を突破(約4,268万人)するなど、観光市場全体の拡大が続いています。

 こうした需要拡大に伴い、研究会では料金が担う主要な役割を2点に整理しています。1点目は、観光客が集中する地域でキャリング・キャパシティ(受け入れ許容量)を超えた過度の混雑を抑えるコントロール手段としての役割です。2点目は、観光資源の保全・維持管理や受け入れ態勢を強化するための財源確保手段としての役割です。従来の集客を主な目的とする料金設定から、当事者による適正な料金設定を通じて観光地全体の質と持続可能性を高める仕組みへの転換が示されています。

 公表された事例では、各地が地域課題に応じて独自の料金設計を進めている状況がうかがえます。富士吉田市では新倉山浅間公園の周辺混雑対策や警備費確保のため駐車場を有料化し、白川村では受入体制増強を目的に村営駐車場の料金改定を行いました。また、京都市では観光利用と市民利用のすみ分けを目的とした「観光特急バス」を導入して一般系統の混雑緩和を図り、銀山温泉(山形県尾花沢市)では需要分散を目指した時間帯別運賃を試行しました。さらに、姫路市では将来の維持管理費算定に基づき市民料金を導入した姫路城の縦覧料改定、東京国立博物館ではサービス向上のための入館料改定、山梨県では安全対策費用に充てる富士山(吉田口ルート)の使用料導入・引上げなど、多様な手法が取り入れられています。

 今回の発表から読み取れるのは、観光需要が拡大する中での料金の捉え方の変化です。急速な需要回復に伴い、交通渋滞や過度の混雑による市民生活への影響、施設維持コストの増大といった課題が各地で表面化しています。こうした課題に対し、料金を単なる個別の値上げとして捉えるのではなく、混雑の抑制や財源確保、地域住民との共存を図るための政策ツールとして捉える考え方が広がりつつあります。

 観光庁は、今回の事例集を各地域で適切な料金設定を議論する際の参考資料として活用を促す考えです。今後は、地域の実情に応じた柔軟な料金制度が全国へ普及していくかに加え、観光客の満足度向上、地域住民の生活環境維持、そして観光資源の保全という要素の調和をどのように達成していくかが、持続可能な観光政策の重要なテーマとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)