浜岡原発問題、内部通報から7年 なぜ止められなかったのか、中部電力が経営刷新

2026年09月15日 12:30

今回のニュースのポイント

中部電力は、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)3、4号機の新規制基準適合性審査における基準地震動策定をめぐる不適切事案を受け、経営体制を刷新します。勝野哲代表取締役会長と林欣吾代表取締役社長が9月30日付で退任し、10月1日付で安井稔専務執行役員が社長に就任します。2019年10月の最初の内部通報から約7年。外部専門家による特別調査委員会の報告書などを紐解くと、2度にわたる内部通報や不適切な社内調査、規制庁への事実と異なる説明を経て、今回の経営刷新に至るまでの「問題を発見・是正できなかった組織上の構造」が見えてきます。

本文
 中部電力は2026年9月14日、臨時の取締役会を開催し、浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における不適切事案の経営責任を明確化するため、代表取締役の異動を含む役員人事を決定しました。9月30日付で勝野哲代表取締役会長および林欣吾代表取締役社長が退任し、10月1日付で安井稔専務執行役員が代表取締役社長に就任します。

 今回の不適切事案は、浜岡3、4号機の再稼働審査の前提となる基準地震動の策定において、地震動評価の「代表波」の選定や模擬地震動の作成などで、審査会合で説明していた方法とは異なる方法や人為的な選定を行っていたものです。

■2019年、外部弁護士の指摘も「押し切られる形」に

 浜岡3、4号機では2014年2月から適合性審査が進められていました。その過程の2019年10月7日、適合性審査への対応をめぐり社内相談窓口(ヘルプライン)へ第1回の内部通報がなされました。特別調査委員会の報告書によると、外部弁護士や法務部門が問題を指摘したにもかかわらず、原子力土建部の意見に「いわば押し切られる形」で会社としての対応方針が採用されました。当時社長だった勝野氏まで報告・相談され対応方針が了承されましたが、最終的に主管部署である原子力土建部側で対応するとして通報処理は終了し、適切な是正には至りませんでした。

■2021年、2度目の通報「意図的な選定」の訴えも是正されず

 さらに2021年1月4日、第2回の内部通報が行われ、地震動評価における不適切な選定方法などが具体的に指摘されました。これに対し原子力土建部は実態と異なる内容をヘルプライン事務局へ報告し、事務局側も別資料との矛盾や発言者への確認を十分に行いませんでした。

 相談者は2021年2月25日に「意図的な選定をしていることが確認できました」と再度不適切行為を訴え出ました。しかし同年3月4日、事務局は「コンプライアンス上の問題なし」として対応を終了。コンプライアンス推進会議への付議や社長への諮問、弁護士への相談も行われないまま、2度目の通報も問題の発見・是正にはつながりませんでした。

■2025年規制庁調査から、12月の実態説明へ

 事態が大きく動いたのは2025年です。5月15日に原子力規制庁から調査の連絡が入ると(規制庁は2026年1月、きっかけを「外部からの情報提供」と説明)、5月21日の初回面談において、中部電力側は事実と異なる資料を作成して説明を行いました。さらに10月30日に規制庁から委託報告書原本の提出を求められると、原子力土建部内で提出を避ける方法が検討されました。その後、同年12月18日、中部電力は実際の選定方法などを規制庁へ説明しました。

 2026年1月5日に問題を公表した中部電力は、外部専門家のみで構成する特別調査委員会を設置。9月11日に提出された253ページの調査報告書では、問題に通底する要因として「独自の正当化理論」が存在したと指摘され、高度な専門性による統制不全や経営層の理解不足が挙げられました。中部電力自身も9月14日の発表で、「再稼働重視を判断の正当化に用い、コンプライアンス・安全を最優先とする判断・行動を徹底できなかった」ことを要因に挙げました。

■経営刷新と現在進行形のガバナンス改革

 経営陣の刷新とともに、中部電力は10月1日付で「組織風土改革推進部」や「原子力ガバナンス推進部」を新設します。また、保安規定の改定認可を前提として、従来の「原子力本部」を「原子力安全推進本部」へ改称する方針です。

 一方、これとは別の事案として、浜岡1、2号機の廃炉事業をめぐり、NuROへの実施報告や費用請求に使われた工事報告書の写しについて、少なくとも14件で書き換えが確認された問題も8月に判明しています。中部電力は会見で、該当する工事に関連する費用を約8億円と説明しました。この廃炉問題について同社は、経済産業相からの報告徴収に基づき、類似事案の有無を含めて9月25日までに報告を行う予定です。

 基準地震動問題に関しても、中部電力は根本的原因分析や具体的な是正措置について今後さらに規制委員会へ報告を重ねる計画です。トップ交代という体制刷新を経て、内部通報が機能しなかった組織風土をいかに解体し、実効性あるガバナンスを構築できるかが問われています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)