カナダに1.2GW級AI拠点構想 Bell、最大525億加ドルの投資計画

2026年09月15日 11:29

カナダのデータセンターイメージ

大規模データセンターと電力インフラのイメージ。Bell Canadaはサスカチュワン州で建設を進める300MW規模のAIデータセンターを起点に、最大900MWを追加し、将来的に最大1.2GW規模へ拡張する構想を示している。カナダ政府は全面実現時の総資本投資を最大525億カナダドルとしている。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

カナダで、AI向け計算基盤を大幅に拡大する大型データセンター構想が動き出しています。Bell Canadaはサスカチュワン州で進める「Bell AI Fabric」について、建設が進む300MW規模の計画に加え、最大900MWの追加容量に向け法的拘束力のない覚書(MOU)を締結し、将来的に1.2GW規模へ拡張する道筋を示しました。カナダ政府は、フルビルドアウト時の総資本投資を最大525億カナダドル、雇用創出を4500人規模としています。一方、Bellは総資本投資が500億加ドルを超える可能性があるとしています。ただし、900MWの追加開発は顧客契約や許認可等を前提とする段階的な構想であり、全額投資が確定した発表ではありません。

本文
 カナダ通信大手のBell Canadaとサスカチュワン州政府は2026年9月14日、同州で進める「Bell AI Fabric」において、AI向けデータセンターの電力容量を将来的に最大1.2ギガワット(1.2GW)規模へ拡張する道筋を発表しました。

 すでに具体化しているのは、サスカチュワン州シャーウッド(レジャイナ近郊)で建設が進む300MW規模のAIデータセンターです。初期の現場工事は2026年4月に始まっており、最初のデータホールは2027年上期の稼働が見込まれています。この初期計画では最大300メガワット(300MW)の電力需要を想定し、州営電力会社SaskPowerが住宅用グリッドと分離した専用の産業向け系統から電力を供給する予定です。Bellによると、300MWプロジェクトでは完成後に80人以上の常勤雇用が見込まれており、長期的な経済効果を最大120億加ドルと自社試算しています。

 今回示されたのは、この300MWの既存計画に対し、さらに最大900MWの追加容量を段階的に確保し、全体で最大1.2GW規模のAI計算インフラへと拡大する構想です。最大900MWの追加開発について、両者は法的拘束力のない覚書(non-binding MOU)を締結した段階であり、Bellは顧客からの契約・コミットメントの確保、商業契約、許認可、環境評価などを条件に段階的に進める方針です。カナダ政府はこの拡張構想が全面実現した場合の総資本投資を最大525億カナダドル、雇用創出を4500人規模と発表しています。一方、Bell側はデータセンター建物やテナントの計算設備、関連発電設備を含めた総資本投資が500億加ドルを超える可能性があるとしています。

 注目されるのは、1.2GWに達する大容量を支える電源構成です。既存の300MW分がSaskPowerの専用系統から給電されるのに対し、追加となる900MW分については、一般の電力網に負担をかけない「non-grid power」として、パートナー企業が開発する天然ガス発電からの給電を想定しています。巨大AIデータセンターの運用では、データセンター本体だけでなく、大規模な電源開発まで一体となった投資構想が示されています。

 背景には、カナダ政府が進める「ソブリンAI」インフラの確保策があります。カナダ政府は「AI Sovereign Compute Infrastructure Program」を通じ、2026年度からの7年間で約8億9000万加ドルを投じて計算基盤の設計・建設・運用を支援する方針です。さらに政府は、国内全体で最大6GWの追加データセンター容量、潜在投資規模で1000億加ドル超に上る複数事業者の検討案件に関与しているとしています。

 一方で、巨大インフラの増設に伴う地域負荷を抑えるため、カナダ政府は「Responsible Data Centre Development Principles(責任あるデータセンター開発原則)」を打ち出しました。Bellや米IT大手らが支持する同原則では、データセンター開発に伴う電力システムのコストを一般の電力利用者へ転嫁しないことや、水使用と環境への影響を最小化することなどを定めています。

 AIの普及に伴い、計算基盤の整備は単なるIT投資を超え、メガワット・ギガワット単位の電力確保を伴うインフラ級の投資へと拡大しています。着工している300MWの初期計画を起点に、非拘束MOUに基づく最大1.2GW・525億加ドルに達する拡張構想がどこまで実現へと向かうのか、電源開発と地域インフラ負荷の抑制を両立する取り組みの行方が今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)