今回のニュースのポイント
政府は7月30日、令和9年度(2027年度)予算の概算要求に向けた基本的な方針を閣議了解しました。通常歳出とは別に『「強く豊かな日本」投資枠』を創設し、要求上限を設けずにAI・半導体やGX(グリーン・トランスフォーメーション)、経済安全保障などの成長投資について、複数年度の計画を基本に支援する方向性を示しました。あわせて、補正予算に依存した財政運営からの脱却や、賃金・物価上昇を要求に反映させる新たな考え方を打ち出しました。
■政府が決定した新たな「予算編成の基本方針」
政府は7月30日、「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」を閣議了解しました。この方針は、各省庁が毎年8月末までに財務省へ提出する来年度予算の要求ルールを定めるものです。
今回の基本方針において中核となるのは、次の3つの大きな柱です。
1.通常歳出とは別に設ける『「強く豊かな日本」投資枠』の創設
2.補正予算に依存した財政運営からの脱却
3.賃金の上昇や資材などの調達価格高騰を要求段階から予算へ反映させる仕組み
各省庁の概算要求手続きを定める基準ですが、その方針を見ると、従来の予算編成のあり方を見直し、中長期的な政策運営へ軸足を移そうとする方向性が表れています。
■新設される『「強く豊かな日本」投資枠』の構造と狙い
今回最も注目されるのが、通常歳出(裁量的経費など)の枠組みとは別に新設される『「強く豊かな日本」投資枠』です。
従来の概算要求では、各省庁が経費区分ごとに設けられた要求上限などを踏まえ、政策経費を要求する仕組みが採られてきました。これに対し今回の投資枠では、国内投資を通じた潜在成長率の引き上げを目指し、「要求上限を設けず、金額を定めない事項要求も含めて所要額を適切に要求できる」仕組みが盛り込まれました。
主な対象領域となるのは、AI・半導体、GX(脱炭素)、経済安全保障、国内投資の推進など、日本の成長につながる重点分野です。
さらに制度的な試みとなるのが、「複数年度」という時間軸の導入です。本方針では、民間企業や研究機関に対する政策の「予見可能性」を高めるため、複数年度の計画に基づく取組を基本とすることが明記されました。特に経済安全保障上重要な分野などについては、複数年度で財源を確保した上で特別会計において別枠で管理する手法も検討されます。単年度ごとの施策にとどまらず、中長期的な投資計画を継続して支援する方向性が示されています。
■補正予算依存からの脱却が意味するもの
これまでの財政運営では、当初予算の編成後に経済対策などを通じて補正予算を編成し、追加の資金需要に対応する場面が多く見られました。
今回の基本方針では、こうした「補正予算に依存した財政運営からの脱却」の方針が明確に打ち出されました。継続的・恒常的に必要となる施策については、年度途中の補正予算で対応するのではなく、「当初予算の段階から必要額を計上する」という考え方に整理されています。
これにより、政策の予見可能性を高め、年度当初から計画的に施策を進めることを目指しています。予算のつくり方を、年度途中の追加措置から、当初段階で必要な政策を盛り込む方向へ移そうとするものです。
■コスト高・物価上昇をあらかじめ前提とした予算へ
もう一つの注目点は、コストの上昇をあらかじめ予算要求に反映させる考え方です。
今回の基本方針では、人件費の上昇(賃上げ)や原材料・設備等の調達価格上昇を踏まえて要求・要望を行うことが明記されました。
令和8年度予算から進められてきた「経済・物価動向等の的確な反映」を踏襲するものであり、政策の実施にあたって人件費や資材高騰を織り込むことが認められます。インフラ整備や各種行政サービス、産業支援策に至るまで、物価や賃金の上昇を前提に予算を組み立てる方向が、より明確になったといえます。
■政府の産業戦略との連動
この新たな予算枠組みは、政府が進める産業方針と連動しています。
方針文書の中では、GXについて「GX2040ビジョン」、AI・半導体について「AI・半導体産業基盤強化フレーム」という政府の戦略をそれぞれ踏まえ、一般会計のみならず特別会計においても要求を行うことが示されています。
AI基盤や半導体産業、GX関連設備などの大規模投資は、事業化から稼働まで複数年を要します。政府が複数年度の計画を基本とすることで、政策の予見可能性を高め、企業や研究機関の投資判断を後押しし、民間投資を呼び込む効果が期待されます。
■今後の焦点と予算編成プロセス
今回の予算編成方針で示された方向性は、今後の具体的な予算案づくりを通じて検証されることになります。
複数年度の予算措置が具体化すれば、企業や研究機関は中長期の投資計画を立てやすくなり、自治体にとっても事業の見通しを持ちやすくなる可能性があります。また、賃金や調達価格を予算へ反映する仕組みが適切に機能するかも注目されます。
各省庁は本方針に基づき、8月末日を厳守して財務省へ概算要求を提出します。その後、秋の査定プロセスや精査を経て、年末の予算案決定、さらには年明けの国会審議へと進みます。新設された投資枠にどのような具体的政策が盛り込まれ、予算の重点化がどこまで実行されるのか、今後の予算編成作業が注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













