日米など11か国が共同警告 北朝鮮IT工作員がAI悪用、企業に注意喚起

2026年08月02日 08:08

今回のニュースのポイント

日本、米国、韓国、英国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランドの11か国政府機関は31日、北朝鮮のIT労働者(工作員)に関する共同注意喚起を発表しました。北朝鮮IT労働者が他国人になりすまして企業からリモートで業務を受注し、得た報酬を核・ミサイル開発資金として送金しているほか、企業内部からのデータ流出や暗号資産の窃取といった「内部脅威」となっていると指摘。特に生成AIや大規模言語モデル(LLM)、映像改ざん技術を悪用して身元を高度に隠蔽しているとして、各国企業に本人確認の厳格化などの対策を求めています。

本文
 日本、米国、韓国をはじめとする11か国の外交・治安・捜査機関等は31日、北朝鮮のIT労働者による不正な資金調達や情報窃取に関する共同の注意喚起文書を発表しました。参加国は日米韓のほか、英国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランドの計11か国に上り、国際社会が連携して企業や機関に警戒を促す異例の警告となりました。

 今回の警告で最も強調されているのが、生成AI(人工知能)技術の悪用による身元偽装の高度化です。発表によると、北朝鮮のIT労働者は大規模言語モデル(LLM)や自動翻訳サービスを活用して不自然さのないプロフィールやコミュニケーション文を作成し、語学力の乏しさを補っているほか、ビデオ面接において人工生成・改変された映像フィードが使用される可能性についても警戒を呼びかけています。さらに、第三国の代理人(プロキシ)を介したアカウント登録や、米国等の海外で会社支給のPCを受け取り遠隔操作する「ラップトップ・ファーム」の運営、VPN(仮想専用線)の使用など、実際の所在地を巧妙に隠蔽する手口も確認されており、各国政府は警戒を呼びかけています。

 狙われているのは単なる外貨獲得にとどまりません。IT労働者は高い技術力を背景に、ウェブサイトやアプリ、ブロックチェーン開発などの業務契約を偽装した身分で受注し、給与を北朝鮮の親機関へ送金して違法な核・弾道ミサイル計画の資金源としています。それと同時に、契約企業内部に「偽装したIT人材」や「業務委託者」として侵入し、正当なアクセス権限を悪用して機密情報や暗号資産を窃取する「内部脅威」として深刻な被害をもたらしています。

 これに対し11か国政府は、企業や受発注プラットフォーム事業者に対し、対抗措置の徹底を呼びかけています。具体的には、身分証明書の厳格な審査や対面面接の義務化に加え、同一IPアドレスからの複数アクセス監視、不自然な稼働時間、登録名義と報酬振込先口座名義の不一致、不自然なプロフィールや応募情報の確認など、不審なアカウントを見抜くためのチェック体制を求めています。

 リモートワークやフリーランス契約が定着し、生成AIが普及する中、企業の採用や業務委託のプロセスそのものが、新たな経済安全保障上のリスクとして警戒されています。外部からの不正アクセス対策だけでなく、組織内部へ侵入する偽装人材を見抜く選考・ID管理体制の再構築が、各企業に強く求められています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)