防衛白書2026が示す日本の「守り」の変化 9兆円超の防衛費、私たちの生活とどう関わる?

2026年08月12日 12:04

en0108_03

防衛省。2026年度の防衛関係予算は全体で9兆353億円となり、初めて9兆円を超えた。防衛力強化の対象は装備品だけでなく、AIやサイバー、宇宙、通信、人的基盤など幅広い領域に広がっている

今回のニュースのポイント

防衛省が公表した令和8年版防衛白書は、日本を取り巻く安全保障環境について「戦後最も厳しく複雑」との強い危機感を示しました。2026年度の防衛関係予算は全体で9兆353億円。このうちSACO・米軍再編関係経費などを除く防衛力整備計画対象経費は8兆8,093億円となり、総額で初めて9兆円を突破しました。防衛力強化の対象は戦闘機や護衛艦といった従来の大型装備だけにとどまりません。ドローンやAI、宇宙、サイバー、通信、さらには大規模災害への対応や自衛隊員の処遇改善まで、日本の「守り」の概念とその投資領域は、国民生活や経済活動へ直接関わる形へと大きく広がり始めています。

本文
 防衛省が取りまとめた2026年版(令和8年版)防衛白書は、日本周辺の安全保障環境が戦後最も厳しく複雑な局面に直面していると提示しました。中国の急速な軍事力増強や中露・露朝の戦略的連携、長引くウクライナ侵略などを受け、2026年度の防衛関係予算は全体で9兆353億円となりました。このうちSACO・米軍再編関係経費などを除く防衛力整備計画対象経費は8兆8,093億円となり、予算全体として初めて9兆円を突破しています。

■ 防衛費9兆円超、投資の中身はどう変わったか

 注目すべきは「9兆円」という総額の規模だけではありません。投資対象が従来の大型装備だけでなく、防衛力を持続・稼働させ続けるための基盤へと広がっている点です。白書では、相手の威圧・攻撃が届かない距離から対処するスタンド・オフ防衛能力や統合防空ミサイル防衛に加え、弾薬の備蓄、装備品の可動率向上、施設・基地の耐久化(強靱性)といった「持続性」への投資が強化されています。

■ ドローンとAIが変えた「戦い方」の常識

 この変化の背景にあるのが、ウクライナ侵略等で顕著となった「新しい戦い方」です。安価なドローン(無人機)が大量に投入され、高価な大型装備やインフラを攻撃する現代戦では、高価な大型装備だけでなく、安価な無人機、AI、通信・情報基盤をいかに組み合わせるかが、戦闘の優位を左右する重要な要素となっています。白書でも、ドローンや衛星コンステレーションをネットワークで接続し、集めた大量のデータをAIで高速処理・分析して意思決定の優越(相手より早い判断)を確保する重要性を強調しています。さらに、妨害電波に対抗するため細い光ファイバーで物理接続して飛ばすドローンの登場など、技術の進歩と、それに対する対抗策の更新が短期間で繰り返されています。

■ サイバー・宇宙・災害対応――日常生活と重なる「守り」の領域

 こうした防衛体制の変革は、有事の防衛にとどまらず、国民の日常生活や経済基盤に直結しています。例えばサイバー攻撃は重要インフラや企業活動にも影響を及ぼし得るため、サイバー安全保障は軍事領域だけの問題ではありません。また、宇宙領域を通じた情報収集や通信、大規模災害への対応、民生技術と安全保障技術の境界が重なるデュアルユース分野、スタートアップとの連携など、防衛を支える領域そのものが広がっています。白書では、防衛生産・技術基盤や研究開発への投資について、経済波及効果や新たなデュアルユース技術の創出につながり得るとの認識も示しています。

■ 装備だけでは守れない、「人」という最大の課題

 防衛力を抜本的に変革するうえで、最も根幹となるのが「人的基盤」です。急速な少子化が進む日本において、どれほど最先端の装備やドローンを導入しても、それを運用・維持する優秀な人材やプロフェッショナルな自衛隊員が確保できなければ機能しません。今回の白書では「プロフェッショナルな自衛隊員」や「人的基盤の強化」に大きなスペースが割かれ、自衛隊創設以来初めてとなる自衛官の給与体系の独立に向けた取り組みをはじめとする処遇改善、生活・勤務環境の抜本的刷新、生涯設計の確立、サイバー人材の確保などが大きく打ち出されました。

 防衛費が9兆円を超えた今、問われているのは金額の増減だけではありません。「何を守り、そのために何へ投資するのか」という視点から、その具体的な投資成果や運用のあり方を国民自身が確認していくことが重要になります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)