今回のニュースのポイント
東京大学の財務状況をめぐる一部報道を受け、大学と文部科学省が相次いで公式見解を公表しました。東大は7日、一部で報じられた「研究者数の削減検討」などの事実を明確に否定しました。続いて文部科学省も12日、東大の2025(令和7)年度決算が損益計算書上で赤字となったことは認めたものの、キャッシュフロー計算書は25億円の黒字であり、現金・預金も1262億円を保有していることから、直ちに資金ショートを起こす状況ではないとの説明を行いました。一方、東大は2026(令和8)年度について44億円の赤字を前提とした予算を組んでおり、経営努力を通じた財務基盤強化が課題となっています。
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東京大学の財務状況や今後の組織運営をめぐる一部報道に対し、東京大学と文部科学省が相次いで公式見解を公表し、事実関係の整理と財務指標の解説を行いました。報道で指摘された「研究者の削減検討」や「文科省への新年度予算提出」について東大側が否定したほか、文科省も損益計算書上の赤字とキャッシュフローの違いを説明するとともに、現金・預金などの財務状況を示し、直ちに資金ショートを起こす状況ではないとの見解を数値とともに示しました。
■「研究者削減」報道、東大が翌日に即座に否定
端緒となった一部報道(8月6日付)では、東京大学が2026(令和8)年度に2年連続で最終赤字となる見通しであり、貯金に相当する資金が数年で枯渇することから、現在の財務状況が続けば研究者削減などの規模縮小が避けられない趣旨が伝えられました。また、2025年度決算とあわせて2026年度予算を文科省へ提出したとの記述も含まれていました。
これに対し、東京大学は翌7日に「本学の財務状況に関する一部報道について」と題する公式見解を公表しました。「本学において、研究者数の削減を検討している事実はなく、そのような方針や計画を決定した事実もありません」と明確に否定しました。さらに「2026年度予算を提出したという事実もありません」と否定しました。
東大は、人件費や物価の上昇により財務環境が厳しさを増している事実は認めつつも、「財務上の課題への対応は、教育研究活動を縮小するためではなく、使命を持続的に果たしていくための基盤を強化するためのもの」と説明しています。
■文科省も見解提示、現預金1262億円で「資金ショートではない」
続いて文部科学省は12日、「東京大学の財務状況に関する報道についての見解」を公表しました。文科省は、東大の2025(令和7)年度決算が損益計算書上で赤字となった事実は認めたものの、具体的な財務データを明示して倒産・資金ショートに直結するものではないと解説しました。
文科省が示した2025年度決算における東京大学の財務数値は以下の通りです。
・資産合計:1兆5217億円
・うち現金及び預金:1262億円
・利益剰余金:1546億円
・寄附金:861億円
・キャッシュフロー計算書:25億円の黒字
文科省はこれらの数値を踏まえ、「直ちに資金ショートを起こし、企業であれば倒産に直結するような赤字ではなく、東京大学の見解の通り、研究者の削減を検討しているような事実はない」と判断を示しました。
■会計上の「赤字」と「現金収支」が一致しない理由
なぜ損益計算書で赤字が出ているにもかかわらず、キャッシュフロー計算書では黒字となるのでしょうか。文科省は国立大学法人会計基準の特性について解説しています。
国立大学法人の決算では、建物や大型研究設備などの減価償却費が会計上の「費用」として計上され、損益を押し下げます。しかし、減価償却費は過去に支出された資産の会計処理であり、その年度に同額の現金が流出するわけではありません。一方で受入時の寄附金などは、現金が入金されても即座に収益(損益計算書上)へ反映されない場合があります。
このため、会計上の「赤字」と実際の「現金手元資金」は必ずしも一致しません。文科省によると、2025年度決算では全86の国立大学法人のうち12法人で損益計算書上の赤字が発生しましたが、いずれも直ちに資金ショートが生じる状況ではないとしています。こうした点からも、損益計算書上の赤字と実際の資金繰りは分けてみる必要があります。
■2026年度は44億円赤字前提の予算、経営努力が必要
ただし、東大の財務運営に課題がないわけではありません。東京大学は2026(令和8)年度予算について、当初から44億円の赤字を前提として策定しており、文科省も「なお経営努力が必要」と指摘しています。
国からの公的支援をみると、2025年度補正予算と2026年度当初予算を合わせた国立大学法人運営費交付金は、全国で前年比609億円増額され、このうち東大には37億円が措置されました。一方で、補正予算で措置された「大学病院機能強化推進事業(349億円)」について、東大は東大病院での不祥事を理由に補助金が不交付となりました。
文科省は、東大の経常収益が過去5年間で500億円以上増加していることを示す一方、不祥事を未然に防ぐガバナンスの確立、組織の新陳代謝、事務の効率化などの成果を求めています。
■「単年度損益」と「資金繰り・財務健全性」の区別
東京大学の2025年度決算が損益計算書上で赤字となり、2026年度も赤字前提の予算を組んでいることから、人件費高騰や物価高に対応した財務基盤の強化が必要な状況にあることは事実です。
一方で、会計上の赤字が直ちに研究者削減や資金ショートに結びつくわけではありません。大学の財務健全性を評価する際には、単年度の損益計算書だけでなく、現預金や利益剰余金、キャッシュフローの動きなどを総合的に見極める必要があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













