在京キー局5社の2027年3月期第1四半期決算では4社が営業減益となる一方、フジ・メディア・ホールディングスは前年同期の営業赤字から黒字へ転換した。各社では地上波広告が苦戦するなか、配信やアニメ、海外販売など「放送外」の収益拡大が進んでいる。(写真はフジテレビ本社)
今回のニュースのポイント
在京キー局5社の2027年3月期第1四半期決算が出そろい、スポット広告の低迷などを背景に4社が大幅な営業減益となりました。一方で、配信、アニメIP、海外販売、イベント、物販といった「放送外」の領域では、各社で成長する事業も目立っています。決算が示したのは、単なる広告減少による産業の衰退ではなく、地上波で番組を流して広告枠を売る単一モデルから、コンテンツを資産として何度も多角的に収益化する企業への激しい構造転換です。グローバル配信巨頭との競合が深まるなか、日本のテレビ局が長年培った制作力やIPをどう世界で稼がせるかが問われています。
本文
「テレビ離れ」が語られて久しい一方、ニュースや災害報道、スポーツ中継などにおいて、地上波テレビは現在も大規模な情報伝達手段の一つであり続けています。では、ビジネスとしてのテレビ局はいまどのような地点に立っているのでしょうか。在京キー局を傘下に持つ5社の2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)連結決算が出そろいました。そこから浮かび上がるのは、地上波広告という長年の収益基盤が苦戦する現実と、その一方で配信、アニメ、海外販売、イベント、物販など「テレビの外」へ稼ぎ場を拡大しようとする各社の姿です。
決算の数値は、まずテレビ業界が置かれた厳しい現実を示しています。キー局5社のうち、日本テレビホールディングス、TBSホールディングス、テレビ朝日ホールディングス、テレビ東京ホールディングスの4社が前年同期比で営業減益となりました。減益率は日本テレビHDが36.6%減、TBS HDが43.0%減、テレビ朝日HDが48.0%減、テレビ東京HDが53.1%減と、いずれも大幅な落ち込みです。一方、フジ・メディア・ホールディングスは前年同期の127億円を超える営業赤字から160億2,500万円の営業黒字へと転換しましたが、これは前年同期の特殊事情による大幅な落ち込みからの反動という側面が大きく、業界全体の広告市況が急回復したわけではありません。
4社に共通してみられたのが、主力である地上波の「スポット広告」の低迷です。スポット収入は日本テレビが前年同期比12.2%減、TBSが11.9%減、テレビ朝日は前年特需の反動もあり21.7%減、テレビ東京も22.6%減となりました。ただ、これを単純な「テレビ離れ」だけに求めるのは正確ではありません。視聴行動の変化や広告主のデジタルシフトが長期的に進む一方、今回の決算では、世界情勢の緊迫化に伴う景気不透明感から広告主が慎重な出稿姿勢をとったことや、前年の特需反動など、各社固有の要因もみられます。
しかし、視点を「テレビ広告以外」に転じると、まったく異なる景色が広がります。日本テレビではドラマ過去作品の海外配信やアニメ販売などのコンテンツ販売収入が238億6,400万円(前年同期比3.9%増)へ伸び、アニメグッズ等の物販事業も84億1,600万円(同8.4%増)へ拡大しました。TBSでは世界配信などの有料配信収入が37億4,400万円(同29.1%増)となったほか、イベントやアニメ二次利用などの事業売上高が61億8,800万円(同83.9%増)と急伸しています。テレビ朝日でも新設された「TDP・イベント事業」が売上高121億6,400万円(同103.9%増)、営業利益4億8,900万円(同304.9%増)と大きく伸び、テレビ東京でも「NARUTO」などの有力アニメIPや配信権販売が支え、アニメ・配信事業が売上高125億5,200万円(同1.6%増)、営業利益21億9,200万円(同6.5%増)と増収増益を確保しました。黒字化したフジでも「FOD」の課金収入や海外向け配信権販売、ポニーキャニオンのアニメ海外販売・音楽配信が全体の収益回復を支えました。
この構造変化を象徴するのがテレビ東京の決算です。同社では主力の地上波・BS放送事業が売上高の減少により5億6,600万円の営業赤字に転落した一方、アニメ・配信事業が21億9,200万円の営業黒字を叩き出し、全社の利益を支える形となりました。「放送事業が赤字でも、自社のコンテンツとIPが利益を生む」という構造が鮮明に現れています。
これらのデータは、テレビ局の姿を「放送広告の増減」だけで捉えることが不十分になりつつあることを物語っています。従来のテレビ局は「番組を放送する会社」であり、その価値は放送時の視聴規模に依存していました。しかし現在のテレビ局は、自社で制作したコンテンツを地上波放送にとどめず、見逃し配信、有料動画プラットフォームへの権利販売、国内外での二次利用、商品化、リアルイベントへと多角展開する「IPを育てる会社」へと変貌を遂げつつあります。地上波放送は単なる収益のゴールではなく、コンテンツの知名度を高め世の中へ広げる「巨大な入口」としての役割を強めています。
ただし、配信や海外コンテンツ販売を拡大すれば、競争の舞台も国内の地上波広告市場だけにとどまらなくなります。世界の配信市場にはNetflixやAmazonなど圧倒的な資本力と世界規模の顧客基盤を持つ巨大企業が存在し、視聴時間やコンテンツ獲得を巡る競合相手の範囲は大きく広がります。資金力だけで勝負するのではなく、日本特有のアニメ、ドラマ、バラエティーといった制作力やコンテンツ文化を力にし、「日本にしか作れないIPをグローバル市場でどう稼がせるか」という戦い方が求められます。また、偽・誤情報も流通するネット環境において、全国規模の取材網と検証体制を持つテレビ局の報道インフラやブランド力も、重要な資産の一つとなり得ます。
今回の第1四半期決算は、新しい収益源が確実に育ちつつも、落ち込む地上波広告を完全に補いきるには至っていない「移行期間」の渦中にあることを示しました。テレビ業界はいま「終わる」のかどうかではなく、蓄積されたコンテンツ創出力や報道インフラを活かし、次の稼ぎ方を確立できるかという重要な局面を迎えています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













