金融庁は日本の金融システムを「総体として安定」と評価する一方、「金利のある世界」への移行を踏まえ、有価証券運用やALM、不動産業向け融資、外貨流動性など幅広いリスクをモニタリングしている(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
金融庁は2026年9月、2025年7月から2026年6月までを対象とした「令和7年度実績評価書」を公表しました。国内金融機関は十分な自己資本を有し、金融システムは「総体として安定」していると評価しています。一方で「金利のある世界への移行」など業務前提の大きな変化を指摘。金融庁が実施したモニタリングでは、有価証券運用やALM(資産・負債管理)に加え、不動産業向け融資や大口融資、米国の関税政策による信用リスクへの影響など、幅広いリスクが点検対象となっています。
本文
金融庁が公表した最新の「令和7年度実績評価書」は、日本の金融システムが現在置かれている位置関係と、金融当局がどこに視線を向けているかを明瞭に示しています。
評価書において金融庁は、「本邦金融機関は全体として十分な自己資本を有しており、金融システムは総体として安定している」との基本的な認識を示しました。資産の健全性を示す不良債権比率(金融再生法開示債権比率)を見ても、主要行等は前年度の0.7%から0.6%へ、地域銀行も1.6%から1.5%へとそれぞれ低下しています。現在の状況は「銀行経営の危機」を示すものではありません。
■「金利のある世界」へ、業務前提の変化に対応
一方で、金融庁が強調したのが環境の変化です。マクロプルーデンス(金融システム全体の安定確保)政策の基本認識として、「『金利のある世界』への移行など、金融機関の業務の前提が大きく変化している」と明記しました。
長年続いた超低金利環境から金利が動く環境へとシフトする中、大手銀行グループ等に対しては、国内外の金利・市場の変動が財務の健全性に与える影響を分析。預金や貸出、有価証券などの資産と負債を一体的に管理する「ALM(資産・負債管理)」の運営方針やリスク管理態勢の検証を行い、高度化を促しています。
■不動産ノンリコースローンや大口・圏外融資もモニタリング
検証の対象は、金利上昇に伴う保有債券などの市場リスクにとどまりません。融資先を含めたバランスシート全体の健全性に目が行き届いています。
金融庁は各金融機関に対し、信用リスク、市場リスク、流動性リスクのほか、不動産ノンリコースローンを含む不動産業向け融資、大口融資、営業地域外への圏外融資などの審査・期中管理態勢についてモニタリングを実施しました。特に大手銀行の国内不動産業向け融資については、国内外の経済・金融環境の変化を踏まえ、日本銀行と合同で各行の与信方針や融資動向に関するヒアリングを継続しています。
■米国の関税政策が与える「信用リスク」も把握
海外動向や国際的なリスク要因への目配りも行われています。
大手銀行のモニタリングにおいて金融庁は、米国の関税政策が各行の信用リスクに与える影響について調査を実施しました。与信先の大口個社への影響や、関税の影響を受けやすい業種への影響を中心に実態把握を行いました。米国の関税政策について、銀行の信用リスクに与える影響という観点から金融庁が確認していることが分かります。
あわせて、外貨流動性リスク管理についても日銀と共同で調査を実施しました。ストレステスト(耐性試験)について金融機関と対話するとともに、共通シナリオによるストレステストを日銀と共同で実施するなど、リスクへの対応状況を確認しています。
■地域銀行には「持続可能な収益性」を求める
地域金融機関に対しては、有価証券運用や各種リスク管理のモニタリングを進める一方で、「持続可能な収益性や将来の健全性に課題を有する先」に対し、早期警戒制度などに基づく深度ある対話を継続し、経営基盤の強化を求めています。
一方、2026年6月の国内銀行の法人向け融資残高は前年同月比7.8%増となっており、うち中小企業向けも6.1%増でした。リスク管理のモニタリングが行われる一方で、法人向け貸出残高は前年を上回って推移しています。
■健全性が保たれているからこそ、次の変動に備える
今回の実績評価書から読み取れるのは、健全性の急激な悪化ではなく、環境の変化に応じた「監督の物差しの変化」です。
主要行、地域銀行ともに不良債権比率は低水準であり、金融システムは「総体として安定」しています。その一方で金融庁は、金利上昇が有価証券やALM、不動産融資、大口融資先、外貨調達へどのように波及するのかという、次の変化に対する耐性を入念に確認しています。
「金利のある世界」への移行が進む中、金融機関の健全性を評価し、潜在的な脆弱性を管理する取り組みは新たな段階に入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













