AIが「答える」から「PCを操作して仕事する」へ OpenAI、GPT-6 Astraで既存業務を直接実行

2026年09月10日 12:24

アンソロ

複数のPC画面を使った業務のイメージ。GPT-6 Astraでは、人間が日常的に利用するアプリケーションをAI自身が操作してタスクを進める「computer use」の能力が強化された(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

OpenAIは、先週投入したフラッグシップモデル「GPT-6 Astra」における企業業務向け機能を公表しました。最大の特徴は、単なるテキストの生成や質問への回答にとどまらず、人間が普段使用している各種アプリケーションをAI自身が操作して業務を進める「computer use」機能にあります。OpenAIは、アプリケーション側に専用のAPIが用意されていない場合でも操作可能としており、企業側が大規模なデータ整備や専用システムの開発を行わずに、既存の業務環境へAIを導入できる可能性を打ち出しています。

本文
 企業における生成AIの活用手法が新たな段階を迎えています。OpenAIは先週発表した最新モデル「GPT-6 Astra」について、人間が日常的に使うアプリケーションをAI自身が操作してタスクを実行する機能の詳細を公表しました。GPT-6 Astraは「ChatGPT Work」「Codex」およびAPI経由で提供されています。

 従来、企業が生成AIを本格的な業務プロセスへ組み込む際には、社内データの整理や専用APIの接続、業務システム自体の改修といった大規模な事前準備が課題となるケースが多く見られました。これに対しOpenAIは、ChatGPT WorkやCodexにおいて、人間が日常的に利用しているアプリを、専用のAPIを備えていない場合でも直接操作できると説明しています。

 大規模な事前準備やシステム開発を減らし、既存の業務環境を大幅に作り替えることなくAIを利用できる可能性を示しています。ただし、実際の運用における総合的な導入コスト削減効果や業務効率化については、今後の企業現場での検証が必要となります。

 アプリケーションの操作能力を示す一例として、OpenAIは表計算ソフトの競技課題を挙げています。2023年の「Microsoft Excel World Championship」で使用されたFinancial Modeling World Cupの課題を実行したところ、優勝した人間の競技者の約4倍の速度で完了できたとしています。これは一般的なExcel業務全般が人間の4倍速になることを意味するものではありませんが、特定の競技課題におけるcomputer useの性能評価例として示されています。

 また、システム設定やコード実行など高度なPC操作能力全般を評価するベンチマーク「Terminal-Bench 4.0」において、GPT-6 Astraは57.9%のスコアを記録しました。OpenAIの説明によると、「GPT-5.6 Sol(37.3%)」や他社モデルの「Claude Fable 5.1(55.8%)」を上回る結果となっています。

 単発のタスクだけでなく、長時間におよぶ業務の完遂能力についてもデータが示されています。OpenAIの発表ページに掲載された顧客企業Basisの評価によると、5時間以上を要する連続的なワークフローにおいて、Astraの導入により一連の業務を最後まで成功させる割合が20%改善したとしています。同じくBoxによる自社評価では、資料に裏付けられていない結論を断定する傾向が改善し、自信を持って誤った主張をする可能性が10%以上低かったとされています。

 一方で、AIがPCや業務システムを直接操作することには、機密情報の公開や誤共有、重要データの誤削除といった企業利用ならではのリスクが伴います。

 OpenAIの社内computer-use安全性評価では、機密情報の取り扱いやデータ削除などの難しい企業シナリオを検証した結果、Astraによる「意図しない結果」の発生が前世代モデルの「GPT-5.6 Sol」と比較して89%少なかったとしています。また、企業管理者向け機能として、利用可能なWebサイトやデスクトップアプリの制限、ファイルのアップロード・ダウンロード管理に加え、重要な操作を実行する前に人間へ承認を求める制御機能を設定できるとしています。

 API価格は、入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドルからと設定されています。OpenAIは、少ないトークン数や試行錯誤の回数でタスクを完了させることで、1タスク当たりのコストを抑えられるとしています。

 GPT-6 Astraの公表によって示されたのは、単なるAIの応答精度の向上にとどまらず、AI自身が人間と同じソフトウェアを操作して既存業務へ入っていくというアプローチの変化です。「人間がAIにプロンプトを入力する」段階から、「AIに実際のPC操作を委任する」段階へ移行できるのか、安全性や管理態勢を含めた企業現場での稼働実績が注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)