高性能CPUでも待機電力「1mWクラス」 ルネサス、IoT・産業機器向け64ビットMPUを量産開始

2026年09月10日 13:05

IoT

IoT・産業機器向けMPUのイメージ。ルネサスの新型「RZ/G3L」「RZ/G3SE」は、Linuxシステムをメモリ上に保持したディープスタンバイ時の待機電力を1mWクラスに抑える(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

ルネサス エレクトロニクスは10日、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)やIoTエッジ機器向けの64ビットMPU(マイクロプロセッサ)「RZ/G3L」および「RZ/G3SE」を発売し、すでに量産を開始したと発表しました。最大1.2GHz動作のArm Cortex-A55を最大4コア搭載し処理能力を高める一方、DRAMのセルフリフレッシュによりメモリ上にLinuxシステムを保持した状態でのディープスタンバイ時に、待機電力を1mWクラスに抑える設計を採用した点が大きな特徴です。

本文
 半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスは10日、HMIやIoTエッジ機器向けとなる64ビットMPUの新製品「RZ/G3L」と「RZ/G3SE」の販売を開始し、すでに量産に入ったと発表しました。

 両製品は、最大1.2GHzで動作する64ビットの「Arm Cortex-A55」を最大4コア搭載し、エッジ側での高度なデータ処理やシステム制御に対応します。今回の新製品でルネサスが強調しているのは、処理性能を高める一方で、待機時の消費電力を抑える設計です。

 新MPUは、DRAMのセルフリフレッシュ機能によってDRAM上のLinuxシステムを保持したまま移行する「ディープスタンバイモード」を備えています。この状態における待機電力を1mWクラスに抑える仕様としており、システムを完全にシャットダウンすることなく低消費電力状態を維持できます。

 完全に電源を切った場合は、再利用時にOSを含めたシステムの初期起動が必要となりますが、Linuxシステムをメモリ上に保持した状態で待機させることで、必要な際のスムーズなシステム復帰を可能にするとしています。常時最大能力で稼働し続ける必要がないIoT機器や産業装置において、システム状態を維持しながら、待機時の消費電力を1mWクラスに抑える選択肢を提供する格好です。

 製品ラインアップは、機能別に2種を展開します。「RZ/G3L」は3Dグラフィックス用のGPUやH.264ビデオコーデックを搭載し、高度なグラフィックス処理を必要とするHMI機器などに向けた構成となっています。一方の「RZ/G3SE」は、高度なグラフィックス処理を必要としない産業用ゲートウェイやIoTエッジ端末などに適した構成です。

 機能の異なる両製品ですが、パッケージのピン配置に互換性(ピン互換)を持たせた設計となっています。これにより機器メーカーは、同一のPCB(プリント基板)設計をベースとしながら、製品のグレードや用途に応じてMPUを載せ替えるといった柔軟な製品展開が可能となります。

 通信や拡張性においては、PCI Express、TSN対応のギガビットEthernet、USBなどの各種インターフェースをサポートしています。PCI Expressを経由して5GやWi-Fi 6の通信モジュールを接続できるほか、外部のAIアクセラレータ(AI処理専用回路)を接続してエッジ側でのAI機能を強化する拡張にも対応します。想定用途としては、EV(電気自動車)用充電器、産業用ゲートウェイ、リテール端末、医療用HMIなどが挙げられています。

 発表時点で両製品はすでに量産を開始しており、開発予定段階ではなく、製品として量産段階に入っています。

 エッジ機器の高性能化や通信機能の高度化が進む一方、処理を必要としない待機時の消費電力をいかに抑えるかが半導体設計上のテーマとなっています。高機能な多コアCPUを搭載しながら待機時1mWクラスの低消費電力を提示し、さらにピン互換によって基板設計の共通化を図った新MPUが、産業用機器やIoT分野でどのように採用を広げていくかが今後の注目点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)