半導体5社、AI需要が業績押し上げ 製造・検査からメモリーまで恩恵拡大

2026年08月19日 11:54

画像・国内製品別IT市場予測から読む戦略的IT投資の動向とは

AI・データセンター投資の拡大を背景に、製造装置や検査装置、メモリーなど半導体関連需要が幅広い領域へ波及している(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

東京エレクトロン、アドバンテスト、ルネサスエレクトロニクス、キオクシアホールディングス、ロームの直近決算では、AIやデータセンターを起点とした需要が半導体サプライチェーンの幅広い領域へ波及する一方、車載や産業向け需要も各社の業績を支えています。AI投資の恩恵は半導体そのものにとどまらず、東京エレクトロンの製造装置、アドバンテストの検査装置、キオクシアのNAND・SSD、ロームのAIサーバー向け製品など幅広い領域へ波及しています。一方、ルネサスでは車載や産業・インフラ・IoT向けが業績を支えており、AI以外も含む複数の需要が半導体市場を下支えする構図がみられます。

■ AI投資の波、半導体サプライチェーンへ広がる

 東京エレクトロン、アドバンテスト、ルネサスエレクトロニクス、キオクシアホールディングス、ロームの主要半導体5社による直近決算が出そろいました。5社の直近決算を横断すると、AI・データセンター投資を起点とした需要が製造装置や検査装置、メモリー、周辺半導体へ広がる一方、車載や産業用途も市場を支える構図が浮かび上がります。

 世界的な生成AIの普及に伴い、データセンターやAIサーバーへの設備投資が活発化しています。この動きは演算を行う最先端半導体の生産増加を促し、半導体をつくる「製造装置」や、複雑化した製品の品質を確かめる「検査装置」への需要を急拡大させました。さらに、大量のデータを高速で処理・保存するための「NAND・SSD」といった大容量ストレージや、AIサーバーの電力を支える周辺半導体へと恩恵の波が拡大しています。

 AI投資の波及効果が単一の半導体製品にとどまらず、製造・検査・記憶・周辺部品へと広がる一方で、自動車向けや産業用途などAI以外の需要軸が下支えする企業もあり、各社の決算には複層的な特徴が表れています。

■ 「作る」「検査する」装置需要が拡大

 半導体を「作る」製造装置と、性能・品質を「検査する」テスタを手がける装置大手2社の決算には、半導体メーカーによる活発な設備投資が色濃く反映されました。

 半導体製造装置を手がける東京エレクトロンの2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算は、売上高が前年同期比33.3%増の7,323億円、営業利益が同46.1%増の2,114億円となりました。データセンター向けAIサーバーの需要拡大を背景に、半導体メーカーの設備投資が前年同期を大きく上回ったことが要因です。好調な進捗を踏まえ、同社は中間期の営業利益予想を従来の4,310億円から4,580億円へと上方修正しました。

 一方、半導体テスタを展開するアドバンテストの2027年3月期第1四半期連結決算は、売上高が前年同期比39.3%増の3,674億円、営業利益が同53.3%増の1,899億円となり、四半期として過去最高を更新しました。HPCデバイスや高性能メモリーなどAI関連の先端半導体の生産数量が増加するなか、高集積化や構造の複雑化に対応する半導体テスタへの需要が急速に高まりました。同社も通期の営業利益予想を8,460億円へと上方修正しました。

 半導体の増産に向けた製造工程だけでなく、高機能化した製品を保証する検査工程へも投資需要が強く波及していることが示されています。

■ AIデータセンター、「演算」だけでなく「記憶」にも需要

 AI投資の広がりは、メモリー市場やストレージ分野にも大きな変化をもたらしています。

 NANDフラッシュメモリー大手のキオクシアホールディングスによる2027年3月期第1四半期連結決算は、売上収益が前年同期比約5.2倍の1兆7,671億円、営業利益が1兆2,700億円(前年同期は449億円の利益)、四半期純利益が8,422億円へと急拡大しました。なかでもデータセンター向けなどを含む「SSD&ストレージ」の売上収益は1兆1,747億円となり、前年同期の2,174億円から急増しています。

 AIサーバーの構築には、演算を担うGPUだけでなく、大量のデータを保存する高速・大容量のストレージが不可欠です。これにより、これまでAI需要の中心とされた帯域幅の広い特殊メモリーだけでなく、大容量NANDやSSDにも需要が波及しました。ただし、同社の業績急拡大にはAI需要に加えてNANDの平均販売単価上昇、出荷量増加、1米ドル=160円前後の円安推移なども寄与しており、複数の好条件が重なった結果と言えます。

■ ロームはAIサーバーと車載、ルネサスには別の成長軸

 AI投資の裾野が広がる一方で、AI以外の市場需要が収益を支える動きも確認できます。

 ロームの2027年3月期第1四半期連結決算は、売上高が前年同期比16.8%増の1,357億円、営業利益が96億円(前年同期は約2億円)へ回復しました。データセンター・AIサーバー向け製品に加え、自動車の電装化進展に伴い車載向け半導体の販売が伸びたほか、SiCパワーデバイス需要も下支えとなりました。なお、営業利益の急改善には、前年の構造改革に伴う減損処理により減価償却費が前年同期の131億円から88億円へと減少した影響も含まれています。

 一方、ルネサスエレクトロニクスの2026年12月期中間連結決算(IFRS)は、売上収益が前年同期比25.9%増の7,987億円、営業利益が約3.1倍の1,926億円となりました。同社では「自動車向け事業」と「産業・インフラ・IoT向け事業」がともに手堅く推移し、業績を支えました。IFRSベースの利益急増には、前年同期に計上された大規模な減損損失などの反動も寄与しています。

■ 業績の背景にある複合要因の整理

 今回の5社決算からは、各社が享受する需要の広がりとともに、業績変動の裏にある特殊要因や市場構造の違いも浮き彫りになります。

 キオクシアの大幅な増収増益にはAI需要だけでなくメモリー価格の上昇や為替の影響が絡んでおり、ロームの利益改善には減価償却費の減少が影響し、ルネサスのIFRSベースの利益急増には前年同期に計上した大規模な減損損失などの反動も寄与しています。また、ルネサスのように自動車や産業機器といった既存市場が成長軸となっている例もあります。

 「5社の利益がAI需要のみによって急増した」という一面的な捉え方ではなく、AI投資を起点とする異なる工程への需要創出と、車載・産業などの従来市場、ならびに前年反動が組み合わさった結果として理解することが重要です。

■ AI投資の持続力と波及の行方が焦点に

 通期などの業績見通しにおいても各社のスタンスには違いがみられます。東京エレクトロンは中間期予想を、アドバンテストは通期予想を上方修正し、キオクシアも第2四半期に旺盛なデータセンター需要の継続を見込みます。対照的にロームは第1四半期の進捗を概ね想定どおりとして通期予想を据え置いています。

 5社の決算からは、AI投資の恩恵が半導体そのものだけでなく、製造、検査、ストレージ、周辺部品へと広がっている姿が浮かびます。AIデータセンター投資が今後も拡大を続けるのか、その波及が半導体サプライチェーンのどこまで広がるのかが、各社の成長を左右する焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)