仕事の話がインサイダー取引につながる場合も 証券監視委、実例から注意喚起

2026年09月18日 14:45

株価イメージ

証券取引等監視委員会は、過去の勧告や検査事例などをまとめた「市場へのメッセージ」を公表。何気ない仕事の会話でも、内容によってはインサイダー取引規制の対象となる場合があるとして注意を促している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

証券取引等監視委員会は9月17日、これまでの勧告や告発、検査事例、公表物などを取り上げ、それぞれの特徴や発生原因、市場関係者・投資家への注意点をまとめた「市場へのメッセージ」を公表しました。今回は、検査結果に基づく勧告や内部者取引(インサイダー取引)に関する勧告、開示違反勧告など計11項目を対象に過去の事案を整理しています。今回の資料では、知人等との何気ない仕事の会話が内容によってインサイダー取引規制の対象となる場合があることや、金融商品取引業者の内部管理態勢、上場企業の開示を巡る問題など、実際の事案に即した注意点が示されています。

本文
 証券取引等監視委員会は9月17日、これまでの活動状況や市場に対する問題意識を分かりやすく整理した「市場へのメッセージ」を公表しました。今回の公表は、同日付けで新たに個別の行政処分や勧告を決定したものではなく、過去に実施された検査や調査に基づく勧告2件、内部者取引に関する課徴金勧告2件、開示違反勧告2件、告発や裁判所への申立て、各種公表物など計11項目を取り上げ、事案の特徴や発生原因、防ぐべきポイントを改めて市場へ伝えることを目的としています。

 公表された資料の中で、一般の役職員にとっても身近な課題として提示されているのが、日常的な会話における情報管理です。証券監視委は、グッドスピードの元役員から公開買い付けに関する情報の伝達を受けた人物が、情報公表前に知人名義の2口座を使って株を買い付けた事案(6月5日勧告)などを取り上げています。その上で同委員会は、知人などとの会話において「何気なく勤務先や仕事の話」をする場合であっても、その内容によってはインサイダー取引規制の対象となる場合があると注意を促しています。上場企業に対しては、知人や取引先などであっても安易にインサイダー情報を伝えないよう、役職員への研修等を通じた周知徹底が重要であると説明しています。

 また、事業を拡大する段階における内部管理態勢のあり方についても実例を挙げて課題を提示しています。moomoo証券の検査事例(6月5日勧告)では、NISA対象外の商品を対象として表示したことや、疑わしい取引の検討・判断が十分に行われていなかった状況などが指摘されました。証券監視委は、経営陣が営業施策を優先する一方で法令遵守に必要な人的リソース配置や内部規程の整備が不十分であった点、内部管理部門における専門人材やシステムリスク管理人員の不足などを要因として整理しています。事業やサービスを拡大する際、それに応じた法令遵守や内部管理態勢を整備する重要性を示す事例として提示されています。

 金融商品を取り扱う事業者における経営管理の不全例としては、ドゥラックアセットマネジメントのケース(6月2日勧告)も紹介されています。同社では経営管理への関与が乏しい役員が存在したほか、雇用契約のない7人が投資助言業務の一部を行い、契約顧客100人に対して買い付け助言を行っていた状況が確認されました。証券監視委は「経営管理態勢及び内部管理態勢が機能しておらず」と整理し、法令違反行為を牽制・防止する態勢が構築されていなかったと指摘しています。

 さらに今回のメッセージでは、ENECHANGEによる四半期報告書等の虚偽記載(6月12日勧告)や、I-neによる有価証券報告書等の重要事項不記載(6月26日勧告)といった開示違反の実例も網羅されています。情報を保有する当事者による漏洩・不正取引の防止、金融サービス事業者による健全な内部管理、そして上場企業による正確な企業開示という、市場を支えるそれぞれの局面における注意点が示されています。

 インサイダー取引や内部管理の不備といった問題は、限られた事業者や特定の人物だけの課題と捉えられがちです。しかし証券監視委が今回公表したメッセージは、日常の会話から事業拡大期の組織設計、投資家への開示に至るまで、企業活動の多様な場面に注意すべきリスクが潜んでいることを提示しています。過去に実際に起きた事例を通じて、上場企業の情報管理、金融商品取引業者の内部管理、投資家に向けた企業開示など、市場の公正性や投資者保護を支える各場面で改めて注意を促した形です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)