AIデータセンター向け800V DC電源の検証に対応する『EA-ELR 21000』。30kWの電子負荷モジュールを基本単位とし、システム全体では最大1.92MWまで拡張できる(画像出典:テクトロニクス)
今回のニュースのポイント
計測器大手のテクトロニクス日本法人は10月6日、次世代AIデータセンター向けに台頭する±400Vおよび800V DC(直流)電源アーキテクチャの検証に対応した電子負荷システム「EA-ELR 21000 Dynamic Test System」を発表しました。本システムは、1,000V耐圧に対応する30kWのモジュールを基本単位とし、システム全体で最大1.92MW(メガワット)、最大5,120A(アンペア)まで拡張可能な性能を備えています。AIアクセラレータの高密度化に伴いITラック当たりの電力需要がメガワット級へと膨らむ中、電源インフラが高電圧の800V DCへ移行しつつある技術トレンドと、それを支える検証設備の大型化の動向を整理します。
本文
生成AIの普及と計算モデルの大規模化に伴い、AIデータセンターの課題は半導体そのものの処理能力にとどまらず、巨大な電力をいかに高効率かつ安全に供給するかという電源インフラへ広がっています。こうした中、テクトロニクスは10月6日、次世代AIデータセンター向けに台頭する800V DC電源アーキテクチャの開発・テストに対応するダイナミックテストシステム「EA-ELR 21000」の国内導入を発表しました。1,000V耐圧に対応した30kWの基本モジュールを組み合わせることで、システム全体で最大1.92MW、最大5,120Aの負荷容量まで拡張可能な試験設備となっています。
ここで注視すべきは、1.92MWという規模がデータセンター全体の受電容量を示すものではなく、電源システムやパワーラックを検証するために電子負荷機器が処理できる最大負荷容量という点です。これほど大規模な負荷を模擬する検証機器が必要とされる背景には、AIサーバーの急速な高電力化があります。
従来の54V DC配電システムでは、将来世代のAIサーバーが必要とする電力を供給しようとすると大電流化に伴う配線抵抗損失や太い銅製ケーブルの重量・コストが課題となります。電気の基本原理として、同じ電力を供給する場合に電圧を高くすれば流れる電流を抑えることができます。このため米NVIDIAなどは、高電圧化によって電力損失や配線インフラを抑制する800V DC電源アーキテクチャの導入を進めています。
同社は2027年以降に向け、ITラック1列当たり最大2MWを給電する「row power center」やメガワット級ラックを支える800V DCインフラの導入ロードマップを示しています。同時に、この高電圧化を業界共通の仕組みとして広げる動きも進んでいます。Open Compute Project(OCP)では、Google、Microsoft、NVIDIAの3社を中心に、800V DCの共通インターフェースやシステム要件の標準化に取り組んでいます。NVIDIAによると、80社を超える機器メーカーやインフラ企業が800V DC仕様に対応する製品開発を進めているとしています。
AIワークロード特有の急激な負荷変動に対応するためには、電源機器が安定して追従できるかを高精度に検証する必要があります。テクトロニクスの新システムは、こうした高速な負荷変化を模擬して電源システムを評価する役割を担います。さらに、試験時に吸収したテスト電力を最大95%の効率で電力網へ返還(回生)する機能を備えており、検証ラボ側で生じる発熱や冷却インフラへの負荷を抑えながら大規模試験を継続できる設計となっています。
AIコンピューティングの性能競争は、GPU単体の進化から、高電圧化する電源インフラ、そしてそれを評価するメガワット級の計測・試験設備に至るまで、データセンターを構成するハードウェア全体に波及しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













