今回のニュースのポイント
日本銀行は2026年10月9日、「適格担保の担保価格」の一部改正などを公表し、金融機関から受け入れる担保の評価基準を2026年11月27日から改定することを明らかにしました。金融市場の情勢を踏まえた定例の検証に基づく措置であり、日銀資産の健全性と市場参加者による担保利用の効率性を確保することを目的としています。残存期間の長い国債や社債、企業向け貸付債権などの担保評価率(掛け目)が一部引き下げられますが、これは担保管理上のリスク係数や評価基準を調整する制度的な見直しであり、政策金利の引き上げや市場での国債価格そのものの変更を意味するものではありません。
本文
日本銀行は10月9日、金融機関が資金供給オペレーションなどで日銀に差し入れる担保の評価基準を定めた規程「適格担保の担保価格」および「国債の条件付売買にかかる時価売買価格比率」の一部改正を発表しました。改定された評価基準は2026年11月27日から適用されます。今回の見直しでは、超長期の国債や社債に加え、企業向けの証書貸付債権など幅広い対象で担保評価率が引き下げられました。日銀は改正の理由について、金融市場の情勢等を踏まえた定例の検証結果に基づくものであり、日銀資産の健全性確保と市場参加者による担保利用の効率性確保を両立させるためと説明しています。
適格担保制度とは、金融機関が日銀から資金を調達する際などに、手元にある国債、地方債、社債、貸付債権などの資産を担保として差し入れる仕組みです。日銀はこれらの資産を担保として受け入れる際、価格変動リスクや回収不能リスクを考慮し、市場価格や債権額面に「評価率」を掛け合わせた額を担保価値として評価します。たとえば、市場価格100億円の債券に対して評価率94%が適用される場合、担保として評価される金額は94億円となります。今回の評価率の改定は、中央銀行としてのリスク管理基準を調整するものであり、債券や債権の市場価格そのものを日銀が変更したり下落を強制したりするものではありません。
具体的な見直し内容を見ると、国債や地方債、社債では残存期間が20年を超える長期の区分で評価率が引き下げられました。国債(利付国債・国庫短期証券)の場合、残存「20年超30年以内」が従来の95%から94%へ、「30年超」が94%から93%へとそれぞれ1ポイント引き下げられます。社債に関しても同様に「20年超30年以内」が93%から92%へ、「30年超」が92%から91%へ改定されます。一方で、残存20年以内の比較的期間が短い国債や社債の評価率は従来どおり据え置かれており、残存期間に応じた細かなリスク調整が行われています。
今回の改正対象は有価証券にとどまらず、金融機関が保有する民間向けの貸付債権にも及んでいます。企業に対する証書貸付債権(非自己査定型等)では、残存「7年超10年以内」の評価率が従来の66%から57%へ引き下げられました。たとえば、対象となる証書貸付債権の残存元本が100億円の場合、担保評価額は従来の66億円から57億円へと改定されることになります。また、適格住宅ローン債権信託受益権の担保評価率についても59%から51%へと見直されました。なお、これはあくまで金融機関が日銀に担保として差し入れる際の評価基準の変更であり、一般の住宅ローン利用者に対する融資条件や金利を直接変更するものではありません。
日銀は今回の見直しについて、金融市場の情勢等を踏まえた定例の検証結果に基づき、本行資産の健全性と市場参加者による担保利用の効率性を確保するための措置と説明しています。中央銀行は、担保資産の市場価格や金利動向の変化に応じて適時・適切に評価基準を見直すことで、将来的な資産の不確実性に備える必要があります。今回の措置は、政策金利の変更や金利引き上げを伴う新たな金融政策の方向性を示すものではなく、日銀の金融調節体制における資産の保全性と実務的な運用効率を高めるための取り組みとして整理されます。
あわせて日銀は、「国債の条件付売買にかかる時価売買価格比率」の一部改正も公表しました。残存「10年超20年以内」の利付国債等を対象に、買入時の時価売買価格比率が1.016から1.017へ引き上げられる一方、売却時および補完供給目的の買戻条件付売却時の比率は0.985から0.984へとそれぞれ改定されています。これは国債の条件付売買取引に用いる価格比率の見直しであり、国債の市場価格そのものを変更する措置ではありません。日銀は今回の改正について、金融市場の情勢等を踏まえた定例の検証に基づくものと説明しています。
11月27日の新基準施行により、金融機関側は同じ資産を担保として提出した際に認められる評価額が従来より減少するケースが生じます。しかし、金融機関全体の資金調達余力への影響は、各行が保有する担保資産の構成や余裕資金の状況、代替となる短期国債などの保有量によって異なります。担保評価率の改定という事象のみをもって、金融機関の資金調達環境が一律に悪化したと解釈したり、金融引き締め策の一環と捉えたりすることは適切ではありません。中央銀行資産の健全性と市場の取引効率を両立させるための定期的な制度運用として、今後の実務への定着が促されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













