米国、既存送電網で290MW追加へ 従来型より1~4年早く、国防生産法で支援

2026年10月18日 11:26

送電線イメージ

送電鉄塔と送電線が連なる電力インフラ。米エネルギー省は、既存送電網の高度化により推定290MWの送電容量を追加する計画への支援を発表した。従来型の増強より1~4年早い容量確保を見込む。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

米エネルギー省は10月16日、バージニア州とウェストバージニア州の送電網高度化計画に、国防生産法に基づく最大5,000万ドルの資金を投入する方針を発表しました。高性能導体への更新や送電容量のリアルタイム評価技術を活用し、Appalachian Powerのバージニア州内の系統で推定290MWの送電容量を追加する計画です。従来型の送電網増強より1~4年早く追加容量を実現できると見込んでいます。

本文
 米エネルギー省(DOE)は10月16日、バージニア州およびウェストバージニア州における大型電力需要の増加に対応するため、国防生産法(DPA)に基づく資金として最大5,000万ドルを投入する方針を発表しました。本資金は「バージニア州・ウェストバージニア州の大口電力需要増加に対応する送電網高度化技術(Grid Enhancing Technologies for Virginia & West Virginia Large Load Growth)」プロジェクトに配分される予定です。既存の送電インフラを高度化することで、大手電力アパラチアン・パワー(Appalachian Power)のバージニア州内の送電系統において推定290MWの追加送電容量を確保する計画です。

 本プロジェクトの計画期間は48カ月で、バージニア州エネルギー局(Virginia Energy)が主導し、アパラチアン・パワーやポトマック・エジソン(Potomac Edison)、地域の協力機関などが連携して進めます。事業の目的は新しい送電線を一から建設することではなく、最新の技術群(Grid Enhancing Technologies:GETs)を組み合わせることで、すでに稼働している既存の送電回廊からより多くの電力を供給できる体制を整える点にあります。

 事業で採用される主要技術の一つが「アドバンスト・リコンダクタリング(Advanced Reconductoring)」です。既存の送電線を高性能な新素材の導体へと張り替えることで、既存の送電回廊を活用しながら送電能力を向上させます。新たな送電ルートを一から整備する場合と比べ、用地確保や許認可に伴う負担を抑え、追加送電容量を早期に確保することを目指します。

 さらに「ダイナミック・ライン・レーティング(DLR)」などの高度な容量管理技術も導入されます。気温や風速などの気象条件や送電線の状態を踏まえ、安全に送電できる容量を動的に評価する技術です。従来の固定的な容量評価と比べ、実際の条件に応じて既存設備の利用可能容量を把握できるようになります。

 今回のプロジェクトで注目されるのは、連邦支援の焦点が「金額の規模」だけでなく「時間効率と容量の創出」に置かれている点です。大型の電力需要が各地で発生するなか、発電所を建設するだけでなく、作った電力を需要地へ運ぶ送電容量の確保が不可欠となっています。しかし、大規模な送電線を新設するには非常に長い歳月を要します。DOEは、既存インフラの高度化により、従来型の送電網増強と比べて1~4年早く追加送電容量を利用可能にできると見込んでいます。増加する電力需要に対応するうえで、容量確保までの時間を短縮できる点が今回の技術の特徴です。

 また、本プロジェクトに最大5,000万ドルの「国防生産法(DPA)」資金が投入される方針であることも重要です。DPAは国家防衛や重要インフラ、産業基盤の維持に必要な国内能力を確保・強化するために用いられる連邦制度です。米政府が送電網の容量増強および制御技術の導入を単なる民間電力会社の設備更新とみなさず、国家の産業基盤を左右する重要課題として位置付けていることがうかがえます。

 近年、AIやデータセンターの拡大、製造業の電化などを背景に、電力需要の増加に対応するインフラ整備が重要になっています。これに伴い、インフラ市場における投資対象も、発電所の新設から、送電線、変圧器、電力制御システム、さらには既存送電網のデジタル化・高度化へと広がりを見せています。今回のバージニア・ウェストバージニアでの取り組みは、既存資産を活用した早期の容量確保策として位置付けられます。

 電力需要の増加に対応するためには、「いくつの発電所を建てるか」という供給能力の議論と並び、「既存の送電網からどれだけの容量を、どれだけ早く確保できるか」という視点が欠かせません。既存の送電網から290MWの容量を早期に引き出す今回のDPA支援策は、今後の電力インフラ投資において「送電容量」と「時間短縮」が重要な価値を持つことを明確に示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)