金融市場インフラの損失対応、国際機関が指針公表 再建費用と6か月分の営業費用を比較

2026年10月19日 15:58

データセンター2

データセンターに並ぶサーバー設備。CPMIとIOSCOは、金融市場インフラの一般事業リスク管理に関する追加指針を公表した。再建や秩序ある業務終了に必要な費用と、現在の営業費用6か月分を比較し、より大きい額以上の財務資源を確保する考え方を明確にした。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

支払決済・市場インフラ委員会(CPMI)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、金融市場インフラ原則(PFMI)の原則15(一般事業リスク管理)に関する追加指針をまとめた最終報告書を2026年10月付で公表しました。一般事業損失を参加者デフォルト損等と明確に区別した上で、自己資本で賄う流動性の高い純資産(LNAFE)について、現在の営業費用「6か月分」と再建・秩序ある業務終了に必要な推計費用を比較し、より大きい額以上を常時保有することを求めています。

本文
 国際決済銀行(BIS)に事務局を置く支払決済・市場インフラ委員会(CPMI)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、金融市場インフラ(FMI)の一般事業リスクおよび一般事業損失の管理に関する補足指針「PFMIに関する追加ガイダンス」を盛り込んだ最終報告書を2026年10月付で公表しました。

 本指針は、2012年に制定された国際基準「金融市場インフラのための原則(PFMI)」のうち、原則15(一般事業リスクの管理)に関する実務上の解釈や対応を一層明確化するために策定された補足文書です。新たな国際基準や法的規制を創設するものではなく、中央清算機関(CCP)だけでなく決済システムや証券決済制度などFMI全般を対象としています。

 指針ではまず、「一般事業損失」の概念を整理しています。これは取引参加者の不履行(デフォルト)に起因する損失や、信用・流動性リスク原則に基づき別途カバーされる損失とは明確に区別される、FMIの事業運営上のリスクから生じる損失を指します。具体的には、事業戦略の失敗、減収、想定外の費用増に加え、訴訟(法的リスク)、保管・投資リスク、システム障害やサイバー攻撃(オペレーショナル・リスク)などに起因する損失が含まれます。

 FMIはこれらのリスクに対し、潜在的な損失規模や発生時期を適切な手法で推計し、事業の継続性が脅かされる事態に備えて再建(リカバリー)や秩序ある業務終了(ウインドダウン)のための計画をあらかじめ策定することが求められます。

 損失吸収手段として保有する「自己資本で賄われた流動性の高い純資産(LNAFE)」の最低必要額の決定方法についても詳細な指針が示されました。PFMIでは最低基準として「現在の営業費用6か月分」に相当する額の保有を定めていますが、今回の指針では、単に6か月分を確保すれば十分ではないことが明確化されました。FMIは再建・秩序ある業務終了計画の実施に必要な費用(通常の営業費用、臨時費用、他の再建手段の利用可能性を踏まえてLNAFEで負担する必要がある損失など)を算出・推計し、その金額と「6か月分の営業費用」を比較した上で、いずれか「大きい方の額以上」を常時保持する必要があります。

 また、資産側における高い流動性と、負債・資本側における損失吸収力を持つ自己資本(共通株式や内部留保など)の双方が、必要額以上を確実に満たしていることが極めて重要と強調されています。さらに、必要に応じて追加自己資本を迅速に調達するための実効性ある計画の策定、取締役会による監視・監督体制の確立、取引参加者など関係者への透明性ある情報開示も促しています。

 本報告書は国際機関による実務上の指針であり、国内における即時の法的義務化を意味するものではありません。金融システムの基盤を担うFMIが不測の事業損失に直面した場合にも、重要な業務・サービスの継続や、必要に応じた再建・秩序ある業務終了に備えるため、十分な財務資源とリスク管理態勢を確保する重要性が示されています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)