賃上げ実感なし83.1%、パート募集時給は過去最高1,275円 2調査に見る賃金の温度差

2026年10月25日 10:58

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子育て世帯の暮らしをイメージした写真。メットライフ生命の調査では、就労者の83.1%が世間で言われるような賃上げを実感していないと回答した。一方、別の求人調査ではパート・アルバイトの平均募集時給が過去最高を更新した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

メットライフ生命が10月22日に発表した意識調査では、就労者の83.1%が世間で言われるような賃上げを実感しておらず、給与に不満を持つ人も69.0%に達しました。物価上昇への不安も84.9%と高水準です。一方、ビースタイルグループが10月23日に発表した9月の求人動向では、パート・アルバイトの平均募集時給が1,275円となり、比較可能な2020年9月以降の最高値を更新しました。募集時給と実勢給与・実感の間には性質の異なる指標の差が存在します。

本文
 メットライフ生命保険株式会社が2026年10月22日に公表した意識調査において、現在就労している人の83.1%が「世間で言われているような昇給・賃上げを実感していない」と回答したことが明らかになりました。一方で、株式会社ビースタイルホールディングスが翌23日に発表した求人動向では、求人サイト「しゅふJOB」における2026年9月のパート・アルバイト平均募集時給が1,275円に達し、比較可能な2020年9月以降で最高値を記録しました。働く人々の実感と求人市場の提示条件との間で、異なる指標が対照的な動きを示しています。

 メットライフ生命の「全国47都道府県大調査2026」(お金・資産形成編)は、全国の20~79歳の男女7,266人を対象に、2026年6月24~25日にインターネットで実施されました。このうち就労者を対象とした集計では、現在の給与に「満足していない」と答えた人が69.0%にのぼり、世間で報じられるような賃上げの動きを実感していないとする層が83.1%を占めました。今回の結果は、賃上げに関する報道や社会的な動きに対し、実際に働く人々の間では昇給・賃上げを実感していないという回答が多いことを示しています。

 同調査では、生活防衛に対する就労者や生活者の切実な心理も示されています。昨今の社会情勢に伴う不安として、回答者全体の84.9%が「物価上昇・インフレ」によって不安が高まったと答え、さらに82.7%が「税金や社会保険料などの負担増」を懸念材料として挙げました。これらの回答からは、物価上昇や税・社会保険料の負担増に対する不安の強さがうかがえます。ただし、こうした不安が賃上げ実感の乏しさを引き起こしたかどうかは、今回の調査だけでは判断できません。

 対照的に、新規採用の現場では賃金水準の引き上げが続いています。主婦・主夫層向け求人サイト「しゅふJOB」を運営するビースタイルグループの集計によると、2026年9月のパート・アルバイトの全国・全職種平均募集時給は1,275円となり、前月比で12円、前年同月比で45円上昇しました。この数値は、同条件で比較可能な2020年9月以降の最高値となります。この結果は、「しゅふJOB」に掲載された求人で、新たな働き手に提示する平均時給が上昇していることを示しています。ただし、求人条件の変化には職種構成なども影響し得るため、個々の企業が一律に募集時給を引き上げたことを意味するものではありません。

 この募集時給の上昇は、特定の業種や地域にとどまらず広範な広がりを見せています。エリア別では集計対象の全エリアで前月を上回り、そのうち6エリアで過去最高を更新しました。職種別でも12分類中11分類で前月から上昇しており、特に「フード・飲食」と「小売・販売」は2カ月連続で最高値を更新しました。「フード・飲食」では時給が前月を上回った企業の求人が全体の約3分の2を占めており、10月以降に順次適用される地域別最低賃金の引き上げを先取りする形で、店舗系サービス業を中心に時給改定が進んでいます。

 ただし、これら2つの調査結果が示す数値は、それぞれ測定対象と性質が根本から異なる点に留意する必要があります。ビースタイルグループの1,275円は、求人広告上に提示された新規募集時の「提示時給」の集計であり、全パート労働者に実際に支払われている平均賃金ではありません。他方、メットライフ生命の83.1%は、就労者個人が主観的に抱く「実感」を尋ねた意識調査です。そのため、新規募集時給が高騰しているからといって、既存従業員の給与が同等に底上げされていると短絡的に結論付けることはできません。

 企業の賃金構造を把握する上では、新規採用市場での競争力維持に向けた募集条件の改定と、既存従業員の処遇改善や生活実感の動向を分けて捉える必要があります。今回の求人データでは募集時給の上昇が確認された一方、別の意識調査では賃上げを実感していない就労者が多数を占めました。ただし、これらの結果だけでは、募集時給の上昇が既存従業員の給与にどの程度波及しているかは判断できません。今後の実体経済を読み解くには、求人広告の数値だけでなく、毎月勤労統計などの実質賃金や実際の支払給与データを合わせて注視していくことが求められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)