2040年代に「食クライシス」の恐れ 日本総研、食品企業に原料調達・商品設計の転換を提言

2026年10月26日 12:34

画・消費税増税前、駆け込み消費。3人に1人がまとめ買い予定。日用品が6割。

スーパーの青果売り場。日本総研は気候変動による農畜水産物の収量減少や品質低下のリスクを指摘し、食品企業に原料調達や商品設計の見直しを提言した。(イメージ画像)

今回のニュースのポイント

日本総合研究所は10月20日、気候変動が食料供給や企業経営に及ぼす影響を分析したレポートを公表しました。世界平均気温が産業革命前より2℃上昇するシナリオの下では、農畜水産物の収量減にとどまらず、品質低下や複数産地での同時不作などにより食料供給が不安定化するリスクを指摘しています。日本総研はこれを「食クライシス」と位置付け、食品関連企業に対し、産地に関与する川上共創戦略と原料変動に柔軟に合わせる適応設計戦略を提言しました。

本文
 地球温暖化の進行が世界の農業生産やサプライチェーンに及ぼす影響を見据え、食品産業における中長期的な事業構造の見直しが求められています。株式会社日本総合研究所は10月20日、気候変動がもたらす食料供給リスクと企業が取るべき適応策をまとめたレポートを公表しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の排出シナリオを前提に、2040年代から2050年代にかけて世界平均気温が産業革命前より2℃上昇した場合を想定し、食料を「作る・買う・届ける」仕組みが同時に損なわれる事態を日本総研は「食クライシス」と定義しています。

 報告書では、温暖化に伴う生産現場のリスクとして、収量の減少だけでなく農畜水産物の品質低下が深刻な課題になると指摘しています。極端な高温や干ばつ、豪雨などの影響により、農作物の着色不良や果実の変形、食味の劣化、水産物の成育不良などが生じる恐れがあります。これによって、仮に一定の収穫量が維持された場合でも、工場の加工ラインや小売店頭の規格を満たす原料が減少し、実際に利用できる調達量が不足するという問題が生じ得ると警鐘を鳴らしています。

 さらに、調達リスクの広域化も懸念されています。世界各地の異常気象が連動し、複数の主要産地で同時に不作が発生した場合、従来の主要なリスク回避策であった「調達先の分散」だけでは安定確保が難しくなる可能性があります。これに加えて、港湾機能や陸上輸送路の寸断、高温化に伴う定温輸送や冷蔵・保管体制への負荷増大も重なります。企業にとっては、原料価格の高騰だけでなく、欠品や操業停止を回避するための持続的な調達基盤の維持が極めて重い経営課題となります。

 こうした複合リスクに対し、日本総研は食品企業に向けて二つの経営戦略を提言しています。一つ目は、生産現場に深く踏み込む「川上共創戦略」です。食品メーカーや商社、外食、小売企業などが、単に市場から原料を買い付ける関係を超え、持続可能な生産地づくりや気候変動に強い品種の開発、効率的な生産技術の導入などに直接関与することを求めています。産地への長期的な投資や生産者との協働を通じ、自社の原材料基盤を根本から守る狙いがあります。

 二つ目の柱が、調達や製造の柔軟性を高める「適応設計戦略」です。原料の数量や品質、産地が気候によって年ごとに変動することを織り込み、商品設計そのものを変化に合わせる手法を提示しています。具体的には、原料の産地や特性が変わっても品質を維持できるレシピ設計、代替素材の活用、外見の不揃いなど規格外品を活用するアップサイクル、そして変更の背景や価値を消費者に丁寧に伝えるコミュニケーションの四つの取り組みを軸に、柔軟な商品供給体制を整えるよう促しています。

 日本総研は、産地の育成には年単位、品種の開発・普及にはさらに長い時間を要することから、早期の戦略着手が重要だと指摘しています。気候変動対応を一部の調達部門だけの課題にとどめず、経営陣が主導して商品開発、製造、販売、投資判断を横断した体制を構築することが重要です。自社にとって不可欠な重要原料のリスクを洗い出し、産地との連携と柔軟な商品設計を組み合わせた経営戦略への転換が、持続的な食料供給を支える鍵となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)