ガソリン補助、基金への支出累計9.6兆円 1日100億円超の価格抑制、制度見直しの背景を解説

2026年10月30日 06:50

首相官邸

10月29日、燃料油価格の激変緩和措置の今後の対応について説明する高市首相。政府は12月以降、補助制度の基準価格を段階的に引き上げる方針を示した(写真:首相官邸ホームページより)

今回のニュースのポイント

高市首相が表明した燃料油激変緩和措置の見直しを巡り、支援に伴う巨額の財政負担が注目されています。首相の説明によると、燃料油支援のための基金への累計支出額は約9.6兆円に達し、足元では1日当たり100億円超のペースで国費が投入されています。補助金は元売り事業者等への卸価格抑制原資として交付されますが、首相は制度見直しについて「財政負担が限界に近づいたとの判断ではない」と述べ、税金の使途を最適化する方針を示しました。

本文
 高市首相が2026年10月29日の記者会見で表明した燃料油補助制度の見直しを巡り、投じられてきた巨額の国費と財政負担のあり方が大きな論点となっています。首相の説明によると、燃料油支援のための基金に対する支出額は、2022年1月の制度開始以来の累計で約9.6兆円に達しました。足元のガソリン補助単価は1リットル当たり50円を超え(資源エネルギー庁公表の直近支給単価は52.4円)、価格抑制のために投じられる財政支出は1日当たり100億円超のペースに上っています。

 留意すべきは、約9.6兆円は燃料油価格を抑えるため国が基金に支出した累計額であり、その全額が石油元売り事業者等に交付済みであることを意味しない点です。直近の基金残高そのものでもありません。また、累計約9.6兆円のうち高市内閣下での支出が約1.4兆円に達したとの説明も、内閣発足からの日数で機械的に消費された金額ではなく、政府の予算・基金支出の規模を示したものです。
 
 経済産業省の資料によると、本事業は消費者に直接現金を給付する制度ではありません。国が基金を通じて事業実施主体(民間企業等)に補助を行い、そこから石油元売り事業者等へ価格抑制原資を支給する仕組みです。元売り各社が卸価格の急激な上昇を抑えることで、店頭小売価格の急騰を緩和します。支援対象もガソリン単独にとどまらず、軽油、灯油、重油、航空機燃料と広範な燃料油が含まれます。

 この価格抑制策を維持するため、これまで累次の予備費などが投じられてきました。過去の基金支出の具体例として、2026年3月24日には令和7年度予備費から燃料油対策基金事業に7,948億円を支出することが閣議決定されました。当時の資源エネルギー庁の資料では、従来の基金残高見込みと合わせて1兆円超の基金規模を確保したと説明されています。しかし原油高が続くなか、1日100億円超というペースでの国費投入が重なり、財政負担の大きさが浮き彫りになっていました。

 巨額の支出が続くなか、与野党からは激変緩和措置本来の趣旨に立ち返り、出口戦略を検討すべきだとの意見が出ていました。10月29日の会見で、記者から財政負担が限界に近づいているという判断なのかと問われた首相は、そのような判断ではないと否定しました。首相は財政負担が限界に近づいたとの判断を否定したうえで、貴重な税金の使途を見直し、より支援が必要な分野へ財源を振り向ける考えを説明しています。

 政府は12月以降、春先に向けて基準価格を毎月5円ずつ引き上げることを基本に対応する方針ですが、補助の完全終了時期は明言していません。首相は当面の支援に必要な基金規模を確保するため「中東情勢等対応予備費」の使用を指示しており、今後は新たな予備費措置や、支援の持続可能性を巡る具体的な制度設計が焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)