今回のニュースのポイント
英国政府は2026年10月30日、National Gridが開発するサフォーク州とケント州を結ぶ海底送電線「Sea Link」の建設計画を承認しました。送電容量は一般家庭約200万世帯分に相当する2GWで、主に海底を経由して電力を輸送します。再生可能エネルギーの送電制約を緩和し、出力抑制に伴う費用の削減と電力利用効率の改善を目指します。今回の決定は建設計画の認可であり、工事完了や送電開始ではありません。
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英国政府およびエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2026年10月30日、英国内の基幹送電網を大規模に増強する連系インフラ事業「Sea Link(シーリンク)」の建設計画を承認したと発表しました。開発主体は送電大手のNational Gridで、東部サフォーク州と南東部ケント州を結ぶルートの大部分に海底送電ケーブルを敷設する計画です。設備の送電容量は2GW(2,000MW、200万kW)に上り、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う送電網の容量不足を解消する国家的重要インフラに位置付けられています。今回の政府決定は建設計画の認可であり、設備の完成や送電開始を意味するものではありません。
計画されているSea Linkは、主に北海沿いの海底を経由して2つの地域を直結する高圧送電設備です。英国政府の説明によると、その送電容量2GWは一般家庭約200万世帯分の電力使用量に相当する輸送規模にあたります。この数値はインフラの送電規模を分かりやすく示すための政府の換算値であり、特定の200万世帯へ直接電力を供給する確定契約を示すものではありません。発電設備そのものを新設する事業ではなく、洋上風力発電などが集中する東部地域から電力需要が大きい南東部方面へ電力を安定的に輸送するための動脈を整える役割を担います。
本事業を推進する経済的な中核の狙いは、送電網の混雑による構造的な「送電制約」の緩和にあります。英国では風力発電などの再生可能エネルギーの導入が進む一方、送電網の輸送能力が不足し、発電された電力を需要地へ届けられない場面が増加していました。系統安定を維持するため発電事業者に発電停止や出力抑制を求め、多額の補償費用が発生することが電力コストの課題となっていました。政府はSea Linkの整備を通じて送電混雑を解消し、発電停止に伴う制約費用の発生を抑制するとともに、クリーン電力の利用効率向上を目指しています。ただし、本事業単独による年間の具体的な費用削減額が確定しているわけではありません。
地域社会への配慮として、事業に伴う地域振興策も盛り込まれています。英国政府によると、設備の設置が予定されるサフォーク州とケント州の双方に対し、National Gridを通じてそれぞれ100万ポンドを超える地域基金が提供される計画です。この基金は、地域の公共施設の改修や新設、自然環境・緑地の保全整備、地元住民向けの技能習得・教育プログラムなどに充てられる見通しです。大規模なインフラ工事が周辺環境や地元コミュニティに及ぼす影響を緩和し、インフラ投資の恩恵を立地地域に還元する枠組みとなっています。
今回の承認は、英国政府が進める電力網改革およびエネルギー安全保障政策の一環です。政府は、国営エネルギー会社Great British Energyの傘下に新設を予定する「Great British Grid」構想を通じて、官民協調による送電インフラの整備加速を図る方針を示しています。さらに、民間企業が自ら系統接続設備を整備できるようにする接続改革の検討も進めています。ただし、Sea Linkの直接の開発主体はNational Gridであり、Great British Gridが直接建設を担うわけではありません。なお、政府は同日、ノッティンガムシャー州での800MW規模の太陽光発電計画など複数の事業承認も公表しており、2024年7月以降に承認した重要エネルギー案件は累計39件に達しています。
Sea Linkのような大規模な海底送電インフラ計画の進展は、高度な送電機器や海洋土木技術を有する日本の産業界にとっても注目すべき動向です。長距離海底送電には、高圧送電ケーブルをはじめ、電力変換・交直変換設備、変電機器、開閉装置、敷設工事など、多岐にわたる高度な技術が不可欠となります。今回の政府発表において日本企業による具体的な部材受注や工事契約が確認された事実はありませんが、世界的に洋上風力の連系や長距離海底送電網の増強需要が高まるなか、国際的な電力インフラ市場の供給網や技術競争の行方を見極める上で重要な事例となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













