法人所得118兆円超でも黒字申告は37.3% 国税庁統計に映る企業収益と所得課税の動向

2026年11月04日 10:57

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国税庁の庁舎。2026年10月に公表された法人税申告統計では、申告所得総額が過去最高の118兆9,000億円となった一方、黒字申告割合は37.3%にとどまった。

今回のニュースのポイント

国税庁が2026年10月に公表した資料によると、令和7年度の法人税の申告所得総額は前年度比16.2%増の118兆9,000億円、申告税額は17.5%増の21兆9,962億円で過去最高を更新しました。一方、黒字申告割合は37.3%にとどまりました。黒字申告件数(122万件)や1件当たり所得は増加し、源泉所得税等も伸びていますが、黒字申告割合が4割未満にとどまる直接的な原因は本資料単独では特定できません。

本文
 国税庁が2026年10月に公表した「令和7事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和7年度における法人税の申告所得金額の総額は118兆9,000億円に達し、過去最高を更新しました。前年度比16.2%増となったほか、申告税額も21兆9,962億円と同17.5%増え、ともに6年連続の拡大です。一方で、法人税の申告件数に占める「黒字申告割合」は37.3%にとどまりました。前年度の36.5%から0.8ポイント改善したものの、全体の4割に届かない水準です。申告所得総額が過去最高を更新する一方で、なぜ黒字申告割合は4割未満にとどまるのか。公表資料が示す具体的な数値から、企業収益と申告構造の実態を整理します。

 公表された法人税申告の主要数値をみると、申告件数は前年度比1.5%増の326万7,000件となりました。そのなかで、課税対象となる申告所得金額の総額は118兆9,000億円となり、前年度の102兆3,381億円から16兆5,619億円増加しました。法人税の申告税額も前年度の18兆7,139億円から3兆2,823億円増加し、21兆9,962億円に達しています。申告所得総額と申告税額の総額はいずれも過去最高を更新し、前年からの増加額も過去最大となりました。なお、ここで示されている申告税額は税務統計上の数値であり、国の一般会計における現金収納ベースの法人税収とは異なります。また、申告所得金額は税務上の所得合計であり、企業の売上高とは区別する必要があります。

 所得総額が急拡大する一方で注目されるのが、黒字申告割合の推移です。令和7年度における黒字申告件数は122万件となり、前年度の117万5,000件から4万5,000件(3.8%)増加しました。申告件数全体に占める黒字申告割合は37.3%となり、前年度の36.5%から0.8ポイント上昇しています。ここで注意すべきは、37.3%という数字が申告を行った件数のうち税務上の所得が発生した申告の割合を示している点です。日本に存在する全法人のうち37.3%だけが黒字という意味ではありません。また、残りの62.7%を一律に赤字企業とみなすことも正確ではありません。税務上の申告状況と企業会計上の当期純損益は異なる基準に基づくため、申告ベースでの黒字割合は4割未満にとどまっているという事実を客観的に捉える必要があります。

 申告内容を分析すると、黒字申告件数の増加に加え、1件当たりの規模拡大が顕著です。令和7年度の黒字申告1件当たりの申告所得金額は9,745万5,000円となり、前年度の8,707万4,000円から1,038万1,000円(11.9%)増加しました。黒字申告件数が122万件へ増えたことと、1件当たり所得の伸びが相まって所得総額を押し上げました。他方、税務上の赤字に相当する申告欠損金額の総額は17兆1,046億円となり、前年度の17兆4,925億円から3,879億円(2.2%)減少しました。赤字申告1件当たりの欠損金額も835万5,000円と前年度比で2.3%減少しています。税務申告上の赤字規模が縮小する一方で、黒字側の所得の伸びが際立つ形となっています。

 所得課税に関連する別の動きとして、源泉所得税等の課税実績も示されています。令和7事務年度における源泉所得税等の税額総額は23兆8,314億円となり、前事務年度の20兆3,445億円から3兆4,870億円(17.1%)増加して過去最高を記録しました。内訳をみると、給与所得に係る税額が14兆2,558億円で前年比15.3%増となったほか、配当所得が4兆974億円で同26.1%増、利子所得等が8,590億円で同60.1%増、特定口座内の株式譲渡所得等が1兆6,641億円で同16.8%増でした。ただし、源泉所得税等は徴収高計算書や納税告知に係る税額を集計したものであり、法人税の申告事績とは対象や集計期間が異なります。両者を直接結びつけることはできませんが、所得課税の現場でも税額の拡大が確認されています。

 今回の国税庁資料では、申告所得総額が118兆9,000億円と過去最高を更新する一方、黒字申告割合は37.3%にとどまりました。黒字申告件数は122万件へと増加し、1件当たりの所得金額も1割超拡大したことで全体の所得規模は底上げされました。しかし、なぜ黒字申告割合が4割に届かないのかという点について、今回の集計資料そのものは業種別や企業規模別の詳細な赤字要因を分析したものではなく、直接的な原因を特定することはできません。物価や原材料費の動向、人件費負担、繰越欠損金の控除といった個別要因の影響を検証するには別の統計との照合が必要です。総額の歴史的拡大と、申告件数ベースでの広がりを分けて捉える視点が求められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)