今回のニュースのポイント
EU統計局が公表した2026年上半期の統計によりますと、EUの家庭以外の需要家向け電力平均価格は1kWh当たり0.18ユーロで前年同期比5.4%下落し、天然ガス平均価格も同0.06ユーロで6.7%下落しました。ただし、直前の半期比では電力が2.0%下落した一方、ガスは1.8%上昇しました。国別では電力のアイルランド(0.27ユーロ)とフィンランド(0.09ユーロ)など大幅な価格格差が存在し、製造業等の事業環境に地域差が生じています。
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欧州連合(EU)統計局(Eurostat)は2026年11月4日、2026年上半期(1~6月)の家庭以外の需要家(事業者)向け電力および天然ガス価格統計を公表しました。EU平均の事業者向け電力価格は1キロワット時(kWh)当たり0.18ユーロとなり、前年同期比で5.4%下落しました。また、事業者向け天然ガス価格も1kWh当たり0.06ユーロとなり、前年同期比で6.7%下落しました。今回の統計はいずれも一般家庭向けではなく、製造業や各種サービス業を含む「家庭以外の需要家」を対象とした調査です。欧州全域の事業活動を支えるエネルギーコストは前年同期比で電力・ガスともに下落したものの、加盟国間の価格水準の格差や直近の推移には大きな違いが生じています。
事業者向け電力価格の国別動向を見ますと、加盟国間で顕著な価格差が確認されます。年間電力消費量が中規模(500~2,000MWh)の区分において、最も価格水準が高かったのはアイルランドで、1kWh当たり0.27ユーロを記録しました。一方、最も価格が低かったのはフィンランドで、同0.09ユーロにとどまり、両国間には3倍の開きが生じています。前年同期比の変化率では、EU加盟国のうち19カ国で下落した一方、8カ国で上昇しました。特にスウェーデンが18.8%上昇、フィンランドが18.7%上昇を記録しています。フィンランドのように価格水準自体が低い国でも前年同期比では急上昇するなど、価格水準と足元の変化傾向は必ずしも一致しておらず、国別の価格動向を評価する際には両者を区別する必要があります。
事業者向け天然ガス価格におきましても、国別の水準や動向にばらつきが見られます。年間消費量が中規模(1万~10万GJ)の区分において、最も価格水準が高かった国はスウェーデンで、1kWh当たり0.11ユーロでした。これに対し、最も低水準となったのはブルガリアとベルギーで、ともに同0.04ユーロを記録しました。集計対象25カ国のうち、前年同期比で下落したのは24カ国に達し、上昇したのはスウェーデン(3.1%上昇)のみでした。下落した国のなかでは、ベルギーとフランスがともに前年同期比13.1%の大幅下落を示しています。天然ガスは広範な加盟国で前年比下落が確認されたものの、最高値のスウェーデンと最安値の国々との間には依然として2.5倍以上の開きが存在します。
今回の統計を比較分析するうえで重要な点は、電力と天然ガスとで直前の半期(2025年下半期)からの推移に違いが生じていることです。電力価格は前年同期比で5.4%下落したことに加え、2025年下半期比でも2.0%下落し、軟化傾向が継続しています。これに対し、天然ガス価格は前年同期比で6.7%下落したものの、直前の2025年下半期比では1.8%の上昇に転じています。また、天然ガス価格全体に占める税金および賦課金の割合は、2026年上半期に17.5%へ上昇しました。これはガス価格に占める税金・賦課金の構成比を示すものであり、税率が17.5%に引き上げられたことや、税額が17.5%増加したことを意味するものではありません。足元の推移の方向性には注視が必要です。
こうしたエネルギー価格の動向は、化学、鉄鋼、素材産業などの製造業や、人工知能(AI)普及で電力需要が増加するデータセンター運営において重要な指標となります。ただし、今回の統計結果のみをもって、欧州製造業全体の収益性が改善したことや、工場新設やデータセンター投資が直ちに拡大したと断定することはできません。企業の実際の調達条件は、長期契約の有無や受電電圧、個別税制の減免措置などによって大きく異なります。今回の統計が示す国別の顕著な価格格差や直近の変動傾向は、欧州域内における事業拠点の配置や生産設備の稼働配分、さらには中長期的なエネルギー調達を検討する際の基礎的な判断材料として重要性を持ちます。
欧州市場に生産拠点や研究開発施設を展開する日本企業にとっても、事業者向けエネルギー価格の地域差は今後の事業展開における重要な監視対象となります。自動車や素材、化学、電子部品、産業機械などの分野では、欧州域内でのサプライチェーン最適化や脱炭素投資の採算性を評価するにあたり、現地の電力・ガス料金の推移が密接に関わってきます。EU平均では電力・天然ガスともに前年同期比で値下がりを示したものの、加盟国ごとの価格水準や直近の推移の方向性は一律ではありません。欧州での事業環境を評価する際には、単一の平均値のみに頼ることなく、進出先各国の電源構成やエネルギー政策、税制の違いを踏まえた多角的な分析を継続していくことが求められます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













