今週の振り返り 振幅が1420円もあった「春の嵐」の週

2013年04月06日 20:02

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週初2日はつまずくが異次元金融緩和の「黒田バズーカ砲」が炸裂して一気に「甘利越え」も

 
 来週の展望 「金融相場」をサプライズで締めくくりいよいよ本格的に「業績相場」入り

 今週、4月第1週の取引時間中の最高値と最安値の差は1420円もあり、株価は底と頂上の間で目まぐるしく動き、まさに「春の嵐」が吹き荒れた。4日に発表された日銀の金融政策決定会合の結果はけっこうサプライズだったようで、その影響はいい意味で来週も尾を引きそうだ。今週はイースターと清明節で海外市場の休場が相次いだが、来週は海外の機関投資家も日本市場にフル参戦してくる。世界に「クロダ」の名がとどろいただけに、海外勢が日本市場をどこまでリスペクトしてくれるか注目される。

 というわけで、アベノミクスの「三本の矢」で「大胆な金融緩和」を打ち上げてから日銀総裁人事、初会合まで続いた「金融相場」は今週でひと区切りで、最後はサプライズ、株価高騰で締めくくることができた。次に来るのは個別銘柄の決算数字が物を言う「業績相場」である。

 来週はさっそく、小売業を中心に2月期決算発表がピークを迎え、主要企業では8日にユニーGHD<8270>、9日に高島屋<8233>、Jフロントリテイリング<3086>、ファミリーマート<8028>、10日にローソン<2651>、ABCマート<2670>、11日にファーストリテイリング<9983>、良品計画<7453>、松屋<8237>、12日に吉野家HD<9861>、マルエツ<8178>が決算発表を行う。政府の要請を受けて春闘でベアやボーナスの支給額上乗せが予想外にひろがり、個人消費がアベノミクスの恩恵を受けて上向く時期が早まるとみられている。それに消費税引き上げ前の駆け込み需要、円安による訪日外国人観光客の増加、株高による資産効果で高額商品の販売が上向くなどの要素も加わるから、小売業でもし弱気な通期見通しを出したら「何か業績の足を引っ張るような要因を隠しているのではないか?」と疑われるような状況になっている。小売業の決算には「強気で当たり前」という想定で臨みたい。

 3月期決算のほうの発表はまだ少し先になるが、今週あたりから新聞に業績観測報道が頻繁に出てきて、発表を先取りして株が買ったり売られたりする季節が始まっている。主要企業の3月期決算がほぼ出揃う5月末まで、投資家が2014年3月期の通期決算見通しの数字の増減を追いかける日々が続く。たとえ増収増益でも、伸びの鈍化はもちろんのこと、アナリスト予測を下回っただけで売られてしまう。投資家は財務分析の専門家ではないので有価証券報告書の財務三表を完全に読みこなす必要はないが、この際、決算短信に載る投資判断に必要な数字や、その説明には強くなっておきたい。そうすれば「業績相場」にも強くなれる。
 
 また、業績観測報道とともに4月、5月は「中期経営計画」の発表も多くなる時期。前週のパナソニック の中計に対するアナリストの評価は散々だったが、投資家にとってはそれも参考になる。中計が出たらアナリストの寸評やレポートもあわせてチェックしたい。

 来週の国内の経済指標は、8日に2月の国際収支、3月の景気ウォッチャー調査、3月および平成24年度の企業倒産、9日に3月の工作機械受注、11日に2月の機械受注、3月の東京都心部のオフィス空室率が、それぞれ発表される。そして12日はオプション取引と日経平均ミニ先物が対象のマイナーSQ算出日である。天気に恵まれた3月は小売業の販売集計はおおむね良かったようだが、景気ウォッチャー調査で2月の数字にどれぐらい上乗せができるだろうか。

 海外の経済指標は、9日に中国の3月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数、アメリカの2月の卸売売上高、10日に中国の3月の貿易統計、アメリカの3月の財政収支、3月のFOMCの議事要旨、11日にアメリカの小売各社の既存店売上高、12日にアメリカの3月の小売売上高、4月のミシガン大学消費者信頼感指数が、それぞれ発表される予定。5日発表のアメリカの雇用統計では非農業部門雇用者数の増加が10万人を割り込み前月比18万人の大幅減、アナリスト予測の中央値より約10万人も少なくネガティブサプライズになったが、小売業の売上のほうには影が差していないだろうか。なお、ヨーロッパでは11日にイタリアの国債の入札があり、12日、13日にはユーロ圏財務相会合が開催される。アメリカ主要企業の決算発表も8日のアルコア、12日のウエルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェースあたりを皮切りに、月末にかけて増えていく。

 来週の株式市場は、まず12日のマイナーSQが意識され、オプション取引の250円の刻みで日経平均13000円のラインは何が何でも確保したいというムードになってくると予想される。また、2月期決算発表や3月期決算の業績観測報道で個別株の選別が進むことも予想され、たとえば「円安だから自動車なら何でも株価上昇」という状況ではなくなってくるだろう。業種別で言えば、今の相場を引っ張っている不動産関連銘柄の絶好調がいったいどこまで続くかという点が気になる。鳥インフルエンザ、朝鮮半島情勢の地政学的リスク、石炭など一過性になりそうなテーマと比較すると不動産関連銘柄の人気はできるだけ長続きしてほしいところだが、11日発表の東京都心部のオフィス空室率の数字がかんばしくなければ、その時点で東証REIT指数ともども一気にしぼんでしまう恐れもはらんでいる。

 キプロスやイタリアのリスクはかなり低下し、北朝鮮もどうやら「吠える犬は噛みつかない」ということわざ通りの様相。4日の日銀の金融緩和策発表でステージを一段上がって区切りがついたことも考え合わせると、来週の日経平均は今週の4月1日や2日のような「春の嵐」に見舞われる可能性は小さく、陽気に恵まれて12700~13500円のレンジで推移すると思われる。(編集担当:寺尾淳)