【2】小売業大手各社の今期の見通し、戦略とは

2013年04月22日 09:05

 
 専門店/戦略を間違えなければV字回復も

 カジュアルファッションチェーンとして「ユニクロ」と並び立つしまむら<8227>の売上高は5.3%増の4910億円、営業利益は3.6%増の455億円、最終利益は9.2%増の275億円だった。新規出店は70店舗あり、「しまむら」店舗の既存店売上高も1%増だった。今期の見通しは、売上高は5.9%増の5200億円、営業利益は12.0%増の510億円、最終利益は13.7%増の313億円。年間配当は150円で据え置き。新規出店は72店舗と前期並み。年度テーマ「商品力と販売力の格上げ」で「しまむら」店舗の既存店売上高2%増を目指す。消費税引き上げ前の駆け込み需要は住居関連や耐久消費財に押されて衣料は苦戦するとみている。

 靴のエービーシー・マート<2670>の売上高は13.3%増の1594億円、営業利益は11.6%増の303億円、最終利益は10.3%増の172億円と好調に2ケタ増収増益。国内67店舗、海外32店舗を出店して新店効果が大きく、PB商品が好調で収益に貢献した。今期の見通しは、売上高は11.2%増の1772億円、営業利益は6.0%増の322億円、最終利益は7.4%増の185億円。年間配当は50円で据え置き。都市部の大型店を中心に90店舗を出店し、取り扱い商品数を増やし女性客の取り込みを図る。海外生産品の円安によるコスト増は増収で吸収できるとみている。

 「無印良品」の良品計画<7453>の売上高は5.7%増の1883億円、営業利益は18.9%増の183億円、最終利益は24.0%増の109億円だった。国内では新規出店は16店舗でも純増は6店舗だったが、衣料品・雑貨分野が2ケタ増と好調。既存店売上高は0.4%増でもネット販売は12.7%増と伸びた。海外事業も19%増と伸びている。今期の見通しは、売上高は9.5%増の2062億円、営業利益は17.9%増の216億円、最終利益は24.0%増の136億円。年間配当は45円増配して155円。中国を中心に積極的な出店を進めて2年連続最高益達成を狙う。

 家具・インテリア小売の分野で急成長したニトリHD<9843>の売上高は5.4%増の3487億円、営業利益は6.2%増の615億円、最終利益は6.7%増の358億円だった。32店舗新規出店した新店効果に加えて既存店売上高もプラスに転じた。PB商品が好調で顧客1人当たりの買い上げ点数も客単価も増えた。円高で海外生産家具の輸入採算が改善し、最終利益は14期連続で過去最高。今期の見通しは、売上高は7.8%増の3760億円、営業利益は2.4%増の630億円、最終利益は5.3%増の377億円。年間配当は10円増配して100円。アメリカ第1 号店を出店し、国内でも新規出店をペースアップする予定で、円安のデメリットは新店効果と合理化で補う。

 ホームセンター大手のコーナン商事<7516>の売上高は3.6%減の2718億円、営業利益は12.6%減の163億円、最終利益は18.3%減の75億円だった。ホームセンター業界全体を潤した前々期の震災復興需要の反動減が大きく減収減益。10店舗を新規出店したが既存店売上高の7.1%減をカバーできず、PB商品の販売拡大で粗利率が伸びても2ケタ営業減益を阻止できなかった。今期の見通しは、売上高は2.6%増の2790億円、営業利益は2.5%増の167億円、最終利益は2.6%増の78億円。年間配当は32円で据え置き。新規出店は19店舗と積極化するが、どこまで回復できるかは予断を許さない。

 ドラッグストア大手のスギHD<7649>の売上高は5.0%増の3436億円、営業利益は7.0%増の184億円、最終利益は10.5%増の126億円だった。67店舗を新規出店したほか、付設の調剤薬局の分野を中心に既存店売上高が伸び、不必要な値引きを取りやめるなどして収益も改善した。今期の見通しは、売上高は6.5%増の3660億円、営業利益は3.1%増の190億円、最終利益は10.5%減の113億円。年間配当は5円増配して32円。80店舗の新規出店と店舗改装を進めて売上、営業利益の上乗せを目指す。最終減益は前期に計上した有価証券評価益がなくなるため。

 全国チェーンの専門店の決算は個人消費の動向を正直に反映し、企業間競争が厳しい分野は利益をなかなか出せなくなっているが、集客やコスト削減やPB戦略などで苦労を重ねている分、今後、個人消費がひとたび上向けば大量出店コストの重圧がかかるコンビニなどよりも利益が拡大しやすくなる。我慢すべき時に我慢して、戦略で間違ったことをしていなければ、前期決算が悪かった企業でも今期はV字回復が望めるだろう。(編集担当:寺尾淳)