【来週の展望】「アベノミクスの青春」はもう戻ってこない

2013年06月16日 20:35

 6月第3週(17~21日)は5日間の取引。国内の経済指標は、17日は4月の第三次産業活動指数、5月の首都圏・近畿圏新規マンション販売件数、18日は4月の鉱工業生産指数確報値、稼働率指数、19日は5月の貿易統計、5月の全国百貨店売上高、5月の訪日外国人数、20日は4月の景気動向指数改定値、5月の全国コンビニ売上高が、それぞれ発表される。
 
 17、18日は英国・北アイルランドでロックアーンG8サミットが開催され、安倍首相は18日に現地で記者会見し、19日にロンドンで講演を行う予定。21日には日銀の黒田総裁が全国信用金庫大会で挨拶する。23日は安倍内閣が「準国政選挙」と位置づける東京都議会議員選挙の投票日で、アベノミクスに対する都民の審判が下る。
 
 決算は、18日にツルハHD<3391>の5月期本決算、21日にジーンズメイト<7448>の2月期第1四半期決算が発表される。
 
 3月期決算企業の株主総会のシーズンがいよいよ本格化し、18日は安川電機<6506>、JPX<8697>、NTTドコモ<9437>、19日はカゴメ<2811>、コニカミノルタ<4902>、コマツ<6301>、デンソー<6902>、ホンダ<7267>、横浜銀行<8332>、JAL<9201>、KDDI<9433>、NTTデータ<9613>、20日は住友化学<4005>、ヤフー<4689>、JFEHD<5411>、オムロン<6645>、ソニー<6758>、21日はJT<2914>、エーザイ<4523>、第一三共<4568>、クボタ<6326>、日立<6501>、アルプス電気<6770>、日野自動車<7205>、富士重工<7270>、リコー<7752>、伊藤忠商事<8001>、三井物産<8031>、住友商事<8053>、三菱商事<8058>、H2Oリテイリング<8242>、JR東日本<9020>、JR西日本<9021>、JR東海<9022>、商船三井<9104>、ソフトバンク<9984>が、それぞれ株主総会を開く。
 
 土曜、日曜に株主総会を開く企業もあり、22日はDeNA<2432>、ブックオフ<3313>、ぴあ<4337>、ラウンドワン<4680>、マネックスG<8698>、角川GHD<9477>、ベネッセHD<9783>が、23日はアミューズ<4301>、松井証券<8628>、カブドットコム証券<8703>が開く。アミューズメント、小売、ネット証券などB2C企業が中心で懇親会やお土産目当ての個人株主が多数参加しそうだ。なお、今年の総会集中日は6月27日で、東証の集計によると東証上場企業の42%の718社が集中する。
 
 海外の経済指標は、17日はユーロ圏の4月の貿易収支、アメリカの6月のNY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、18日はドイツとユーロ圏の6月のZEW景況感指数、アメリカの5月の消費者物価指数(CPI)、住宅着工件数、建設許可件数、19日はユーロ圏の4月の建設支出、20日は中国の6月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、ユーロ圏の6月の製造業およびサービス部門の購買担当者景気指数(PMI)速報値、消費者信頼感指数速報値、アメリカの6月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数、5月の中古住宅販売件数、景気先行指標総合指数、21日はユーロ圏の4月の経常収支が、それぞれ発表される。
 
 アメリカの個人消費、住宅市場に関する指標が多く発表される。20日の中国のHSBC製造業PMIは5月23日の「暗黒の木曜日」の引き金になっただけに、注目されそうだ。
 
 17、18日のG8サミット以上に重要視されるのが18、19日に開催されるアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)で、結果発表は日本時間で20日未明の午前3時に予定されており、その直後にバーナンキ議長が記者会見を行う。ヨーロッパでは18~19日にアメリカのオバマ大統領がドイツを訪問し、21日にEU財務相理事会が開かれる。

 野田前首相の「解散・総選挙」発言の11月14日から5月13日までの6ヵ月間で日経平均終値が70.6%も上昇したアベノミクス相場を支えたのは「政策期待、為替、値頃感」だった。2月14日に麻生太郎財務大臣は「俺たちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」と発言していた。ほんの4ヵ月前のことだが、苦い試練を経た今となっては、そんな〃アベノミクスの青春〃は遠い昔の話のように思えてくる。

 現状の日本株を動かすのは、「(先物、信用の)需給、為替、金利高不安」である。値頃感も政策期待もとうに消え失せ、安倍内閣が成長戦略を打ち出しても、市場では「あれがない、これがない」と文句をつけられた末に株価下落の冷や水をかけられるだけ。5月23日前場までのスピード違反の急上昇のツケで裁定買い残、信用買い残が膨脹し、需給の偏りが不安定な相場の要因になっていたが、それはようやく14日のメジャーSQ前に縮小に向かい始めたところ。もっとも、取引時間中に為替のドル円が数十銭程度動いただけで日経平均がうろたえて100円単位で乱高下するという現象は、毎日のように起きている。
 
 現実は厳しいが、それでも「暗黒の木曜日」の前日の5月22日から直近最安値の6月13日までの日経平均終値の下落幅は20.4%である。半減でもしたかのように感じている人がいそうだが2割減。しかも1月、2月の〃アベノミクスの青春の日々〃と比べると、まだ700円以上、高い水準を保っている。
 
 ここで投資家は、何を期待すべきなのか。
 
 春先のように日経平均が1ヵ月に1000円ずつ上がっていく〃青春の若さの爆発〃を期待するのは、高望みのしすぎで、ないものねだり。アベノミクス相場は、もうそんなに若くない。〃アベノミクスの青春〃は、もう二度と戻ってこない。それを望むのはプロ野球にたとえれば、ファンが35歳のベテラン選手に18歳のルーキーと同様の将来の成長期待をかけるようなもの。まともなファンなら35歳の選手には「ケガをしないように身体をいたわって、1年でも長く現役でがんばってください」という気持ちで応援するものではないだろうか。
 
 そう、大事なのは「ケガをしないこと」である。すでに日本株は5月、このペースだと年末の大納会までに24年前の史上最高値38915円を超えるかというすごいスピードで暴走してクルマが大破し、大ケガを負ってパフォーマンスが低下してしまった。もう以前のような〃若さの勢い〃に任せた無理はきかず、破竹の快進撃も望めない。アクセルを踏むにしても慎重に、あらゆるリスクに気を配って安全運転を心がけないと、また大ケガをしたら今度はもう立ち直れなくなるかもしれない。安全運転とは、たとえば日経平均の1ヵ月1000円上昇ペースを半分の2ヵ月1000円ペースにスローダウンさせるようなことで、それでも途中、ケガでストップしなければ、大納会までに5月22日の終値15627円を超えることはできる。
 
 投資家が期待すべきなのは、「アベノミクスの青春いま再び」とか「めざましいV字回復」とかではなく、そうしたスローでも着実なリカバリーだ。それは日経平均から「乱高下」のイメージが払拭されること、週間の騰落がプラスになることから始まる。これこそ、来週に課せられている課題である。
 
 来週は17~19日はまるまる「FOMC結果待ち」で、今週に引き続き薄商いで推移しそうだ。メジャーSQを通過したので、先物がらみの乱高下がどれほど緩和されるかを確かめたい。G8サミットはG20サミットほど経済問題のウエートが高くないので、アベノミクス批判でも噴き出さない限り、そんなに大きな影響は及ぼさないと思われる。それだけに20日は非常に重要な日になる。

 望ましいシナリオとは、日本時間の未明にFOMCが出口戦略のデの字も口にせず量的緩和策堅持を発表し、バーナンキ議長が記者の巧みな誘導尋問をはね返して緩和の縮小を「時期尚早」ときっぱり否定し、NYダウが上昇して、午前10時45分発表のHSBC中国製造業PMI速報値が50を超えること。そうなれば為替はドル高円安が進み、日経平均は13000円を超える水準に定着して来週を終えられるだろう。アメリカの個人消費や住宅関連の指標が好転すればなおよし。それと逆の結果になれば為替の円高が進みそうで13000円台維持はおぼつかないが、その場合でも14日のSQ値の12668円が下値支持線になるはず。ということで来週の日経平均のレンジは12700~13500円とみる。週間の騰落がプラスになることが出直しの第一歩だ。(編集担当:寺尾淳)