NYダウはマイナスからジリ高し180ドル高で4日ぶり反発。5月の小売売上高、新規失業保険申請件数が市場予測を上回り、ウォール・ストリート・ジャーナルの「FRBが金融緩和政策の縮小懸念を和らげる手段を検討中」という記事も投資家心理を落ち着かせたが、6月は15000ドルを割り込むと必ず自律反発している。前日午後3時以降、ドル円がたびたび93円台をつけたが、14日朝方の為替レートはドル円が95円台後半、ユーロ円が127円台後半と円高も一服していた。
3ヵ月に一度のメジャーSQこと先物・オプション取引の特別清算指数算出日で、鬼が出るか蛇が出るか緊迫の取引開始。日経平均は223.52円高の12668.90円で始まるとすぐ12700円台に乗せ、3分後に12800円を突破するが、安倍内閣が「成長戦略」と「骨太の方針」を閣議決定した午前9時すぎから急進した円高に足を引っ張られ、伸びが止まったところでSQ値12668.04円が出る。始値より86銭安いだけだが全面高だったので、日経平均がSQ値を下回らずに終えれば来週以降の上昇相場入りのサインとされる「まぼろしのSQ」になる可能性があった。
円高に押され日経平均は12700円台に沈むが、乱高下で荒れることはない。前日、先物が先行した大幅下落局面で現物を売って先物を買う裁定解消売りがかなり進み、清算に伴う混乱まで持ち込まれなかったと思われる。ところが円高のほうが止まらずドル円が94円台に突入したため、下落する日経平均は容赦なくSQ値を下回って「まぼろしのSQ」を消し、吉兆を打ち砕いてしまった。
その後は為替と歩調を合わせて値動きが落ち着き、ドル円が95円台に戻ると12800円に再びタッチ。後場の2時台には12900円にもタッチしたが、大引け前の土壇場でまたまた為替が94円台に振れたため売り込まれ12700円を割り込む。終値は241.14円高の12686.52円とSQ値をかろうじて上回る。4日ぶりに反発したが「甘利ライン」の13000円台回復は遠かった。日経平均が金魚のフンのように為替にくっついて動く呪縛から、いつになれば解放されるのか。今週は2勝3敗で191円下落したが、下落幅は前週から大幅に圧縮した。TOPIXは+12.28の1056.45。売買高は37億株、売買代金は3兆3155億円で、メジャーSQだがマイナーSQの5月10日の44億株、3兆9592億円を下回った。
値上がり銘柄960に対し値下がり銘柄は635もあり全面高とは言えない状況。それでも業種別騰落率のマイナスは証券、銀行、保険の金融系3業種だけで、プラス上位は不動産、倉庫、電気・ガス、医薬品、金属製品、小売などで、プラス下位は非鉄金属、輸送用機器、鉱業などだった。
SQの日なので「日経平均寄与度御三家」は朝から買われて上昇し、売買代金ランキングの2位、3位、11位に入った。金融・証券はふるわず、メガバンク3行は全てマイナスで、証券大手の野村HD<8604>は値動きなしで大和証券G<8601>は13円安。マネックスG<8698>は値下がり率10位、岩井コスモHD<8707>は同12位と大幅安だった。輸出関連もドル円94円台の円高では主力株のトヨタ<7203>もキヤノン<7751>もプラスマイナスゼロがやっとで、ソニー<6758>は7円安、三菱自動車<7211>は1円安。プラスの銘柄もホンダ<7267>が25円高、富士重工<7270>が17円高、マツダ<7261>が6円高、日立<6501>が12円高、新日鐵住金<5401>が5円高と小幅高にとどまり、東芝<6502>の13円高、2.89%の上昇率で大きい方だった。
一方、今週不振だった不動産は大きく挽回。三井、三菱、住友の大手3社は揃って3ケタ高で、三菱倉庫<9301>が値上がり率11位に入るなど含み資産関連の倉庫株も買われた。ユニ・チャーム<8113>は今期、海外事業の営業利益が33%増えて380億円に達し国内事業を逆転すると報じられ70円高。値上がり率1位の金融システム開発のシンプレクスHD<4340>はMBO実施発表が好感されストップ高比例配分。同2位で売買高11位の住石HD<1514>は西日本の37度台の猛暑で火力発電用の石炭の需要増が連想され買いを集めた。ちなみに関西電力<9503>は74円高で同17位。同3位の転職サイトのリブセンス<6054>は株式分割を材料に一時ストップ高になっていた。
11日にマザーズに新規上場したペプチドリーム<4587>はストップ高で連騰。前日ジャスダック新規上場の横田製作所<6248>も148円高で、波乱が続く状況でもルーキーががんばっている。
少し前までソーシャルゲーム関連銘柄の代表として君臨していたグリー<3632>は、みずほ証券が投資判断を引き下げ58円安と年初来安値を連日更新し値下がり率3位と売られた。ガンホー<3765>が異次元の上昇ぶりを見せる中、業績も株価もライバルのDeNA<2432>の背中が遠くなるばかり。
この日の主役は前日夜に飛び込んできた川崎重工<7012>の突然の社長解任劇。取締役会が三井造船<7003>との経営統合を進めていた長谷川聡社長ら幹部3人を解任し、村山滋新社長は統合を白紙に戻した。4月22日に日経新聞がスクープし東証が売買停止措置まで行って対応した大型統合は「生き残りには良い組み合わせ」と思われていたが、株主総会で承認される直前のドタキャンに市場は好意的に反応し川崎重工は13円高で、袖にされた三井造船は8円安で値下がり率7位になった。この件に限らず昔も今も、トップが「新聞辞令」を使って強引に事を進めたら、後でロクなことが起こらない。(編集担当:寺尾淳)