「○○○待ちの様子見」という言葉は市況解説ですっかりおなじみ。○○○には「アメリカの雇用統計発表」とか「FOMC」とか「日銀会合」が入ることが多いが、「総選挙」や「大統領選挙」のような政治日程が入ることもある。今年は「日銀新総裁決定待ち」や「成長戦略発表待ち」の様子見もあった。米国債が格下げされマーケットが混乱した2011年夏のアメリカでは「債務上限問題解決待ち」とか、バーナンキFRB議長が講演する「ジャクソンホール待ち」というのもあった。
来週は、その「○○○待ち」が3つも4つも重なった特異な週になる。もっとも4~5日の日銀の金融政策決定会合は黒田総裁が「戦力(金融政策)の逐次投入はしない」と明言しているので、今回も新しいものはまず出ないと思ってよく、待つまでもないイベントかもしれない。次の5~6日のG20サミットは、新興国の通貨安、株安が「アジア通貨危機の再来か」と騒がれ、先進国を突き上げる動きがあるかもしれないが、リーマンショック直後の2008年11月の第1回ほどの緊急性はない。むしろ6日のアメリカの雇用統計発表のほうが、新興国が恐れている量的緩和の縮小開始につながるだけにマーケットに与える影響は大だろう。そして7日のIOC総会でのオリンピック開催地決定は、日本とスペイン(ユーロ圏)とトルコのマーケットにはきわめて重大な影響を及ぼす。つまり、来週は日本では「○○○待ちの様子見」が最大4つ重なるが、1週間の取引が終了した後に大きなイベントが2つも待っている。
そうなると、「9月はイベントラッシュが来る」と盛んに言われ、8月後半は「9月イベント待ちの様子見」が極まったにもかかわらず、第1週はまだ市場参加者が手を出しづらく「様子見」のまま金曜日の取引が終わると思われる。8月の夏枯れ、低体温の状態が来週もそのまま継続することになるだろう。
商いは多くて売買高20億株、売買代金2兆円そこそこで、為替とリンクした先物主導の仕掛けで突然、100円オーバーの急騰や急落が起きる激動のボラティリティ。しかしブッダの手の上の孫悟空のようにトータルでは同程度の水準に収まる。手がかり難で東京電力<9501>のようなごく限られた主力銘柄や低位株、超低位株の回転売買があきることなく繰り返される。もともと低体温なので、材料株、テーマ株の物色が盛り上がったかと思えばその熱は1日、早ければ半日であっさり冷めて、翌日はその銘柄が値下がり率ランキングに勢揃いして白けさせる。そんな、無気力でけだるい夏相場の「残暑」が来週もなお、続くことになりそうだ。
そこにもし、「アメリカ、シリアにミサイル攻撃開始」というブレイキングニュースが入ったらどうなるか。市場関係者があれこれ話題にするのはドンパチが始まるまでのことで、開戦の瞬間から〃戦後処理〃を視野に入れた動きが出そうだ。おそらく「限定的」という言葉があふれ、金や原油や円が高騰したら日経平均は柳に風のようにあっさり下落してアッと言う間に「織り込み済み」になり、他人事のように静かに事の成り行きを様子見するのみ、となるだろう。でもそれは「戦争のかわし方」としては悪くない。低体温のほうが「平常心」を保てる。来々週、オリンピック開催決定で国民も株式市場も浮かれ気分の真っ最中に戦争が始まって水をぶっかけられるほうが、よっぽど怖い。それは日本でもスペインでもトルコでも同じだ。
27日から30日まで4日連続で25日騰落レシオが80%を切り、「売られすぎ」のシグナルが出ていた。来週は「平時」なら30日終値の13388円より下の水準になれば自律反発すると思われる。日経平均終値の変動レンジは7月終値、8月SQ値、前週終値がすっぽり入る13640~13670円の水準を軸に上下300円の値幅で動き、13340~13970円とみる。ただしシリア攻撃が開始されて、「戦時下」で金や原油が急騰したり、リスク回避の円買いで1ドルが95円台、94円台になったりするようなら、13000円の「甘利ライン」あたりが防衛線になるだろう。(編集担当:寺尾淳)