増加するデジタルサイネージ 動く広告で、未来も動く

2013年11月09日 19:24

 ここ数年で急速に増えている「動く看板」デジタルサイネージ。とくに大都市圏の駅構内やショッピングモールなどでは、今やこの電子看板が当たり前のように見かけるまでに普及している。株式会社富士キメラ総研が今年5月に発表した「デジタルサイネージ市場総調査 2013」によると、2012年度の国内のデジタルサイネージ市場は前年比111.1パーセントの822億円、デジタルサイネージ広告市場では、ビルボード(屋外ビジョン)、交通広告、インストアメディア他を合わせて、前年比116.9パーセントの214億円となっている。また、20年予測では、国内のデジタルサイネージ市場は約3.1倍、デジタルサイネージ広告市場は7.5倍に膨れ上がると見られている。

 デジタルサイネージは、ヨーロッパを起点に2001年頃から北米やアジアなど、世界中に広がりを見せている。とくに北米ではデジタルサイネージの活用が積極的で、たとえば世界最大のスーパーマーケットチェーン・ウォルマート(GMS)は、同社の6,000店舗にディスプレイ65,000面を展開して、世界最大の導入事例として注目されている。

 日本国内でも、導入当初は情報の告知が中心であったが、ディスプレイの大画面化や薄型化、通信環境の充実などにつれて、需要の幅が多岐に渡るようになってきており、販促や広告をはじめ、空間演出的な利用もされるようになってきた。今後は、インタラクティブ機能やモバイル、SNSなどとの連動も活発に行われていくだろう。設置できる場所や活用内容も様々な可能性が考えられるため、ディスプレイメーカーや周辺機器メーカーだけでなく、配信事業者や広告代理店など、多業種からの新規参入が相次いでおり、一大市場と化している。

 たとえば、我々の生活にもっとも身近なデジタルサイネージとしては、飲料の自動販売機がある。自販機そのものに液晶画面を備え付けたものが多いが、中でも特徴的なのはダイドードリンコ<2590>が2009年より導入しているデジタルサイネージだ。こちらは自動販売機本体ではなく併設する空缶入れの上部にディスプレイを搭載したタイプで、本体よりもスペースが確保できるため、より大きな画面の液晶で情報を発信することができる。通常時は、広告を展開するほか、ニュースや天気予報、地域コミュニティの情報発信メディアとしての利用もできるほか、通信ネットワークを使ったリアルタイムな情報配信を利用して、有事の際には気象や災害の速報や避難情報なども配信できる。

 東日本大震災以降、国民の中に節電意識が広まり、看板やポスターをわざわざ電子看板に変えてまで電力を使う必要があるのかという声もある。しかし、広告だけでなく、ダイドーの自販機併設タイプのように、いざというときに命を守る道しるべになるのであれば、必ずしも無駄とばかりも言い切れないだろう。さらに新規参入の業者が増えれば、また違った有益な使い方も考え出されるかもしれない。いずれにせよ、動く広告・デジタルサイネージは、わが国の経済発展を促すためには、欠かせない広告媒体になりつつあることは間違いなさそうだ。(編集担当:藤原伊織)