6日午後、政府の「産業競争力会議」のメンバーである楽天<4755>の三木谷浩史会長兼社長は記者会見を行い、インターネットによる医薬品の販売に関して、「一部規制が残ったまま立法化されれば、同会議の民間議員を辞める」との意向を示した。
この発言は、成長戦略の一環として政府が行う「医薬品のネット販売解禁」において、一部規制が残ったことに対する抗議、そして全面解禁を求めるもの。「産業競争力会議」はアベノミクスの三本目の矢である成長戦略の具現化を図るための重要な会議であり、政府が就任を要請した議員が辞任するとなれば、政権運営には痛手となるとの見方もある一方、「岩盤規制」の緩和は半年程度で結論が出るほど簡単な問題ではないとの専門家の見方もある。成長戦略へ向けた改革のための議論が最後まで行うことが出来るかどうか、安倍政権のかじ取りがここで問われることになりそうだ。
インターネットによる医薬品の販売について、これまで三木谷氏は全面解禁を主張し続けていた。その一方、政府は安全性と利便性のバランスを図るとして協議を行った結果、劇薬のネット販売を禁止し、市販の医薬品に転用した直後の品目もある一定期間、インターネットによる販売を禁止すると決定。
この決定に対し三木谷氏は、「合理的な根拠がないのに、ネットでのみ販売禁止期間を設けることは問題」と指摘し、劇薬のネット販売を禁止するのであれば、対面販売も禁止すべきではないかと主張し、法的措置も辞さない態度を示している。
会見を行った三木谷氏は、厚生労働省の決定について「規制緩和の後退というより、規制強化」と怒りをあらわにし、「規制緩和とは反対方向を向いており、とても残念だ」と述べた。さらに「薬事法改正案が立法化されれば、辞任する」と強い意志をみせ、立法化を待たずに「方向性が固まれば」と早期辞任の可能性も示唆した。
楽天子会社であるケンコーコム<3325>などが、インターネットによる販売解禁を巡り起こした行政訴訟の上告審で、最高裁判所は「規制は無効」と判決を下しており、ケンコーコム側の勝訴となっている。三木谷氏は今回、一部規制が残った状態のままネット販売が立法化されれば、再びケンコーコムが国に訴訟を起こすことになるが、楽天としてこれを支援すれば、政府側の民間議員という立場と矛盾することから、議員辞任を考えていると、その理由を説明した。(編集担当:滝川幸平)