■消費増税前の駆け込み需要は「国内最後の稼ぎ時」
下期について各社が期待するのは、消費増税前の駆け込み需要による国内販売台数の増加である。トヨタの小平信因副社長は決算発表の記者会見で、消費増税前の駆け込み需要を「ある程度想定している」と話した。そのトヨタがドル円92円を97円、ユーロ円122円を130円に変更したのをはじめ、各社とも想定為替レートを引き上げて実勢レートとの差が縮まっているので、海外販売では為替の円安による効果がこの先、あまり期待できない。それよりも確実に収益に貢献してくれそうなのが国内の駆け込み需要だ。
それは、どの程度あるのか。前回の消費増税(1997年4月)直前の1~3月期の新車販売台数(登録車)は167万8000台で、前年同期比12.4%増だった。2013年1~3月は94万1000台だったので、12.4%増なら11万6000台が上乗せされる計算になる。少なく見積もっても各社とも2014年1~3月期の販売台数の2ケタ増は確実だろう。
しかし、その後が怖い。1997年の新車販売台数は増税後の4月は前年同期比-12.70%と急落し、その後、1999年10月まで2年半、マイナスから浮上できなかった。日本自動車工業会では、8%への消費増税後の2014年度の国内新車販売は5%のままだった場合と比べて12%減少し、403万台に落ち込むと試算している。ちなみに1997年度の新車販売は14%の減少だった。
税率8%が10%になる2015年10月までは1年半しかなく、二度目はもう期待できない。つまり、自動車業界にとって2014年4月の消費増税の前の駆け込み需要は「国内最後の稼ぎ時」なのである。下期、国内でどれだけの数の新車を売って稼いで利益をあげるか。それが、そのメーカーのその後の運命を決定づけると言っても、決して過言ではないだろう。その結果は来年5月、通期の本決算を発表する時にわかる。(編集担当:寺尾淳)