清涼飲料業界はここ数年、売り上げ規模が横ばい状態だといわれているが、2011年に発生した東日本大震災の影響から、市場の傾向には少し変化が見られるようだ。
富士経済が先般発表した、飲料系7分野18カテゴリーを対象とした「2012年版 清涼飲料市場調査」によると、東日本大震災によって、生産・物流拠点の被災とともに、資材・包材不足による生産制限など、飲料業界も他の業界同様、大きなダメージをこうむっていることが伺える。しかしながら、果実・野菜飲料などは生鮮野菜の代替として需要が高まるという追い風にみまわれ、11年は前年比113.4%、516億円と大幅増となっている。
また、それ以外にも、従来の果汁系飲料などから野菜系飲料への需要シフトが見られ、今後、野菜系飲料の拡大が見込まれている。この背景には、言うまでもなく、現代人の食生活の変化と、様々なカテゴリーの中で健康志向が高まっていることがある。実際、時間に追われるような多忙な生活を送っている現代人にとって、健康的な食事をバランスよく毎日摂取するということは至難のワザだ。そのような環境の中では、トクホや野菜系などの飲料が健康意識の高い人に好まれるのは当然といえる。また、飲料ならいつでも手軽に摂れることも、現代人のライフスタイルに適している。
さらに、2008年からメタボ検診が始まったあたりから、男性もダイエットや肥満解消のために健康的な食事を意識するようになったことも大きい。忙しいビジネスマンにとって、野菜系飲料は美味しく栄養を補給できる便利さが受けているのだ。
コンビニエンスストアやスーパーなどの量販店でも、野菜系飲料のスペースが徐々に広がりを見せ始め、メーカー各社も野菜系飲料のラインナップを積極的に増やしている。
たとえば、カゴメ<2811>では、看板商品でもあるトマトジュースだけでも4種類、他にも定番のカゴメジュースをはじめ、人気の「野菜生活100」や「野菜生活これ一本」など、野菜系飲料だけで50を超える商品をラインナップしている。また、お茶で有名な伊藤園<2593>も人気の野菜ジュースブランド「充実野菜」シリーズに低カロリー版の「充実野菜低カロリー」を加え、シェアの獲得を図っている。さらに、大手飲料メーカーだけでなく、はちみつ製品で有名な山田養蜂場からも、手軽に美味しく栄養補給できるドリンク「しょうが&はちみつ」と「ブルーベリー&はちみつ」が10月に発売されて話題になっている。同製品は紙容器で手軽に飲めるローヤルゼリー入りドリンクで、一本195gで231円。どちらも高価なローヤルゼリーが入っていることや、「しょうが&はちみつ」高知県産大しょうが、「ブルーベリー&はちみつ」にはアントシアニンを多く含む野生種のブルーベリーを使用するなど、はちみつ以外の原材料にもこだわった製品づくりとなっている。そして何よりも、はちみつ製品のブランドとして培ってきた山田養蜂場に対する信頼感もあり、売り上げは順調に伸びているようだ。
また、野菜系飲料と同じような理由から、エナジードリンクと呼ばれるものも近頃売り上げを伸ばしている。しかしながら、単にエネルギー補給というだけでなく、より自然なものを求めることで健康を保とうとする考え方とは少し異なるだろう。野菜不足や栄養不足だと、仕事も勉強もはかどらない。忙しい生活を送っている人ほど、日々の栄養補給には気を配りたいものだ。(編集担当:藤原伊織)